……というものをつらつら考えてみました。
参考資料は
・『馬場秀和のマスターリング講座』第2章 シナリオ作成
http://www004.upp.so-net.ne.jp/babahide/library/chapter2.html
参考システムは、DX3、PARANOIA、クトゥルフ、シノビガミあたり。
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1.TRPGの目的設定とシステムごとのスタンスの違い
上記記事より引用。
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以下に、RPGにおける「目標」を分類して示します。
レベル1の目標 : PCがミッションを達成する
レベル2の目標 : PCの動機を満たす
レベル3の目標 : プレーヤーの動機を満たす
レベル4の目標 : 最終的にレベル1から3を全て満たす。それが無理なら、
レベル1から3の目標をバランスよく追求する。
RPGにおいてプレーヤーが目指すべき真の目標は、レベル4にあります。複雑
で、困難で、バランスが要求される、ひと言でいうなら「挑戦に値する」素晴らし
い目標です。
これに比べれば、他のレベルの目標、例えばレベル1の目標は、単純です。
(達成が容易だという意味ではありません)
もし、プレーヤーがこういった「RPGにおける目標の多層構造」を理解しない
で、単純にレベル1の目標達成だけに全力を注ぐなら、それは文字通り「レベルの
低い」プレイだということになります。
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でまあ、上記の認識は比較的一般的な認識なんじゃないかと思うのですが(どうなんだろう?)、懸念としては、たとえばDX3の経験点を得る基準を見てみると上記の、レベル1に関する目的しか記述してないのでは?というところがあり、だとすると上の引用の基準で言えば、DX3で目指されている楽しさというのは、
「レベルの低い楽しさ」
ではないか?という疑問が発生するかなあと思います(DX3の経験点の基準の「シナリオの目的の達成」=「レベル1の目標 : PCがミッションを達成する」と考えた場合)。
僕の考えでは、それは単に比率の問題でDX3では上記のレベル1の目的設定が重視されているだけで、レベル2、レベル3の内容もどこかにまぶされて、ある程度は考慮されてると思うんですが。
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ちなみに他のシステムで上記の目的設定の辺がどうなっているかというと(わかりやすく偏った例を挙げておきますが)
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・PARANOIAの場合
レベル1:
完全なフレーバー。基本的にクリアされないのが普通。むしろ邪魔する方に血道を上げる。
レベル2:
比較的重視?(秘密結社辺りのルール)
レベル3:
目指しているメインの楽しさ?
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・クトゥルフ神話TRPGの場合
レベル1:
これがメインになるときもあるし(探索ものの場合?)
フレーバーになるときもある(お化け屋敷的シナリオとか、B級ホラー系を目指すときとか)
レベル2:
システム上のフォローはない。かなり軽視気味。
レベル3:
比較的重視(正気度ルールの辺)
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・シノビガミの場合
レベル1:
そもそも皆無では(笑)
レベル2:
超重視。
レベル3:
比較的重視(忍者というスタイルの辺り)
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という感じでしょうか。
「目的」設定という観点で整理すると、システムによって全く楽しみ方が異なるというのはわかりますでしょうか?
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2.各レベルの目的達成による充実感の違い
で、次に上記の各レベルの目的設定で、どのレベルの目的が達成されたらPLが楽しいと感じるか、についてなんですけれども、僕の感覚で言うと
レベル4>レベル3>>>レベル1≒レベル2
という感じかなあと思います。
ごく自然の当たり前の感覚だと思うんですけれども、やっぱり「(PLが)自分がこうしたい!」と思ったことが達成されるのが楽しいんじゃないでしょうか。
逆にGMがセッションを管理/制御するという観点で言うと
レベル1>レベル4>>>レベル2≒レベル3
て感じかなあと思うんですけど。
で、そう考えると、レベル1の楽しさを重視して、レベル2,3を軽視するDX3は、GMがセッションを管理するには楽だが、TRPGとしてすごくつまらないんじゃないかという懸念が発生すると思います(そんなことはないと思うんですけれども)。
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3.レベル3の楽しさに歩み寄る
本質的に上記のレベル3の目的が達成されるのが常にTRPGでは楽しいと思うんですが、しかしセッションを制御するためにはレベル1のところを重視した方が楽。その矛盾を解消するために工夫が必要だと思っていて、実際下記のような工夫がされていると思います。(実際は複数の手段がそれぞれ対処されていると思いますが、大雑把にメインとなる対処法を整理すると)
・DX3の場合
・ハンドアウト等によって、レベル1の目的=レベル3の目的と認識出来るPLを選別する。
・他のレベル1重視なシステムの場合
・戦闘などのルールを面白くすることで、レベル1の目的を達成する楽しさを向上することで、結果的にレベル3≒レベル1な状態に引き寄せる(ロールマスターとかD&Dとか最近のゲーム性重視なシステムとか?)。DX3も多少この傾向は入ってるかのう?
・PARANOIA、クトゥルフの場合
・レベル3の楽しさをメインにしてもらって全く構わない。レベル1の楽しさはフレーバーでしかない。
・シノビガミの場合
・レベル1の楽しさというのはバッサリ無しにした。
・レベル2がメインで、レベル2の楽しさはレベル3の楽しさと親和性が高い(PC/PLを同一視しやすい方向に進めると)
という感じでしょうか。
整理すると、対処方法としては下記の4つがあると思われます。
1)シナリオの情報を公開して、ミッションクリアをPLの目的として楽しめるPLを選別する
2)戦闘ルールなどのシステムメインのゲーム部分の面白さを強調することで、嗜好の合ったPLが寄ってくるようにする。あるいは、プレイしながら楽しさに目覚めさせる、とか。
3)レベル1は「フレーバー」として扱い、レベル3をメインにする
4)レベル1を捨ててレベル2メインにし、レベル2-レベル3の親和性の高さを生かして融和させる
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4.まとめ
まとめるとこんな感じでしょうか。
・結局のところ一般的にはPLが自分でやりたいことが達成されるのが楽しいのだ(と考える)
→ただ、最近のシステムに慣らされてしまって「自分でやりたいこと」自体がわからないって人もしばしばいるんですよねえ(笑)。
・システムの重点が「PLが自分でやりたいことの達成」からずれていることがある。最終的にシステムの重点が「PLが自分でやりたいことの達成」に近付くようにする各種の工夫がある。
→最終的な目的は同じだが、入口・途中経過部分でのさまざまなスタイルの存在、楽しみ方の存在を認識する必要があるかな?
以上