コンテクストの共有とTRPG:(・_・)

・演劇入門(講談社現代新書:平田 オリザ (著) )
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4061494228/hatena-hamazou-22/
というのを読んでたのですが、ちょうど同じ著者の感想記事が出てて面白かったので。

http://d.hatena.ne.jp/taitei/20100130
http://d.hatena.ne.jp/taitei/20100201
http://d.hatena.ne.jp/taitei/20100208
http://d.hatena.ne.jp/taitei/20100210

「演劇入門」で

・リアリティのあるセリフとは?
 →コンテクストのすり合わせの過程
 →コンテクストのすり合わせとは、対話によって表現される
 →しかし日本語には言語的に対話の機能が発達してきていない

という論が展開されて、全体として平田オリザ氏の演劇理論の話としてまとまるので、こちらから読んで各論に入った方がわかりやすいかなとは思いました。コンテクストをすり合わせるためにもw。



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1.TRPGにおける「コンテクスト」とは
 「演劇入門」では「コンテクスト」とは、下記のように説明されています。

> 「コンテクスト」とは、直訳すれば「文脈」のことであり、「その単語はどういうコンテクストで使われているの?」などというのが一般的な使用法である。だが、ここでは、この言葉をもう少し広い意味で使うことにしたい。ここで言う「コンテクスト」とは、一人ひとりの言語の内容、一人ひとりが使う言語の範囲といったものと考えてもらいたい。
> ジョン・ロックの考えに従えば、まず私たちは、普通、次の二つの事柄を前提にして(誤解して)、他者とコミュニケーションをとっている。

>一、自分の考えは、当然、自分の考えている当の事物と一致しているものと信じている。(表象の一致……概念と事物が一致している)

>二、自分がある言葉によって表明した考えや物事は、他人も同じ言葉によって表明すると考えている。(間主観性の一致……概念と言葉が一致している)

> だが、これはやはり大きな誤解である。(後略)

 ということで、ここの論は戯曲上で使われるセリフないし動作ないし描写の「コンテクスト」について言及されますが、同様にTRPGにおける「コンテクスト」とは何か?を考えてみると、大まかに下記のように分類できると考えます。

<1>ルールについての認識(ルール認識)
<2>キャラクターについての認識(キャラクター認識)
<3>キャラクターの置かれた状況についての認識(状況認識)
<4>話の展開についての認識(展開認識)
<5>世界観についての認識(世界観認識)
<6>プレイ結果についての認識(結果認識)

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2.TRPGにおけるリアリティとは
 「演劇入門」の論に従うと、(外的、内的)対話によって「コンテクスト」のすり合わせが行われると初めて「リアリティ」が出現する、という論が提唱されています。TRPGで同じ考えによって「リアリティ」が発生するとすれば、上記の分類と合わせて下記のようになると考えられます。

<1>ルールについての認識(ルール認識)
 →ルールについての議論をするかどうか?

<2>キャラクターについての認識(キャラクター認識)
 →キャラクター認識についての議論をするかどうか?

<3>キャラクターの置かれた状況についての認識(状況認識)
 →状況認識についての議論をするかどうか?

<4>話の展開についての認識(展開認識)
 →展開認識についての議論をするかどうか?

<5>世界観についての認識(世界観認識)
 →世界観認識についての議論をするかどうか?

<6>プレイ結果についての認識(結果認識)
 →結果認識についての議論をするかどうか?

 まあ、「演劇入門」の理論というのはハリウッド映画的物語構築理論とは対立する考え方なので、いろいろ泥臭かったりして違うのですが。シド・フィールドとかの脚本の理論を読むと「こうしなさい/こうするとうまく行く」という確立した様式があって、とにかくそれに従ってやればうまく行く、というやり方がされますが、「演劇入門」の方は、そういう絶対君主的なやり方よりも民主的に、いちいち対話してすり合わせよう、という考えになっております。で、上から押し付けるやり方だとリアリティは出ない(大上段に「こうだ!」と言って始められると(話としてうまく構成が出来ていたとしても)何もかもが嘘っぽく見えるとか)、という批判の書というところもあるかと。

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3.「コンテクスト」のすり合わせに対する様々なスタンスと「リアリティ」
 現状、ルール・テクニックとしては下記のようになっていると考えます。

 ◎……リアリティを促進する
 △……用法次第
 ×……リアリティを減退させる

 ここで書いているのは「演劇入門」で書かれているところの「リアリティ」があるかないか、についての評価であって、それがセッションとして良いか、悪いかという評価ではないので注意。

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×:1)ゴールデンルール
 ゴールデンルールでは、

 <1>ルールについての認識(ルール認識)

 は、GMの「コンテクスト」を一方的にPLに押し付けるためのものです。

 最近は、さすがに、いろいろ気がひけたのか、対話とか信頼関係とかも重要だという注釈が付くようにはなりましたが、原則は変わってませんし、対話するにしても具体的な手続きが書いてないので微妙なところです。

 いちおう「ゴールデンルール」の根拠として「時間がないから」という話がよく挙げられますが、本当にそうかどうかは後日検証してみたいと思います。個人的な意見としては、セッション上最低限必要なのはクライマックス・オープニング・キャラメイクの3つ(大きく見積もって3時間)のみで、コンベンションの6時間セッションを想定すると3時間も時間が余ってるのに、何を馬鹿なことを言ってるんだ(笑)、ていう感じですが、詳細は後日。

 TRPGの第3世代以降では、ルールがルールのためのルールになっていて、リアリティが感じられないという評価を以前見た記憶がありますが、この辺の対話性の無さが大きく影響を与えているように思います。

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×/△:2)「ぶっちゃけ」
 <1>ルールについての認識(ルール認識)
 <2>キャラクターについての認識(キャラクター認識)
 <3>キャラクターの置かれた状況についての認識(状況認識)
 <4>話の展開についての認識(展開認識)
 <5>世界観についての認識(世界観認識)

 基本的にすり合わせは出来ねー!と降参したときに使うテクニックなので、×で。
 「ぶっちゃけ」たあとは、ちゃんとすり合わせをすることもあるが、しないことも多いのでグレーということで△。

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×:3)フェイズプロセッション(アリアンロッド)
 <4>話の展開についての認識(展開認識)

 なんていうか、ルールで決まっているとしか。

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△:4)ハンドアウト
 <2>キャラクターについての認識(キャラクター認識)
 <3>キャラクターの置かれた状況についての認識(状況認識)
 基本的にはGM側からPL側に「コンテクスト」を押し付けるルールと言って良いかも知らんですがグレーゾーンかな。
 この手のルールは「PL側から提示するインタフェース」が明示されてるかどうかが「対話」が発生するかどうかに大きく寄与するのですが、僕の場合はハンドアウトを提示した場合は、その後「質問票」を提示することにしています。略式でやる場合は適当に対話で質問を投げかけて考えてもらったりするんですけど。深淵の場合は下記のようなフォーマットで対話を実施します。

------------------------------------
・(運命/縁故)[          ]について
 ・あなたはそれについてどう考えていますか?
 
 ・最終的に、それをどうしたいと考えていますか?
 
------------------------------------
(運命・縁故の数だけ繰り返す)

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◎:5)質疑応答(Aの魔法陣)
 <1>ルールについての認識(ルール認識)
 <2>キャラクターについての認識(キャラクター認識)
 <3>キャラクターの置かれた状況についての認識(状況認識)
 <5>世界観についての認識(世界観認識)
 について、対話によってリアリティを出すルールと言って良いでしょう。

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△:6)A-DIC(Aの魔法陣)
 <5>世界観についての認識(世界観認識)
 基本的にはGM側からPL側に「コンテクスト」を押し付けるルールと言って良いかも知らんですがグレーゾーンかな。

 長期セッションをネットう上でやるときは、世界観を整理したデータサイトを設置したりします(わしの場合)。

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◎:7)街づくりシート(りゅうたま)
 <5>世界観についての認識(世界観認識)

 PLにアイデアを出してもらって話し合うためのルールです。

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◎:8)オブジェクト(りゅうたま)
 <5>世界観についての認識(世界観認識)

 判定修正値をPLにアイデアを出してもらって話し合うためのルールです。

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◎:9)反省会
 <6>プレイ結果についての認識(結果認識)

 これか(笑)。

 反省会について難しいのは、世の中には反省会しない方が良いと思われるような、ろくでもないセッションしか世の中にはないと、デザイナーに考えられているのかとか、対話して穏便に済ませる技量がないと考えられているのか(「演劇入門」の、日本では対話がなかなか上手く出来ないという話ともつながる)、そういうところだと思いますが。

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◎:10)夢歩き
 <4>話の展開についての認識(展開認識)

 PL側のインタフェースとして「語り部の提示」が明確になっております。
 中身の処理はグレーゾーン(GM次第)。

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◎:11)GMレス系ランダムセッション系ルール
 <4>話の展開についての認識(展開認識)

 ランダムで出た結果に対して、詳細は話し合って決めることになっておりますな。

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◎:12)キャラクター間の対話
 <2>キャラクターについての認識(キャラクター認識)
 <3>キャラクターの置かれた状況についての認識(状況認識)

 ルールとしてはフレイムギアの「コンタクトイベント」など。
 「コンタクトイベント」については、僕的には「こういうのをやりたい!!!」てのはあんまりないんだけど「お題さえくれれば何でもやるよっていうか、なるべく変なお題をください」ていう感じなので、あまり違和感を感じないんだけど、世間的には評判はいまいちらしい(笑)。
 PvP系なシステムでも必然的に(相手の立ち位置を探るためなどに)対話をせざるをえなくなるところがある。
 PCが協力して共通の敵を倒すという構図は、対話を全くしなくても回るので

「今日セッションやったけど、GMにばかり話をしてて、PC/PL同士の対話が全くなかった」

というのが、わりとありがちである。

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◎:13)ネタを拾う
 <2>キャラクターについての認識(キャラクター認識)
 <3>キャラクターの置かれた状況についての認識(状況認識)
 <5>世界観についての認識(世界観認識)

 PLのネタを拾うのは、PLのイメージする世界観とGMのシナリオ世界をすり合わせる行為そのものである。

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◎:14)情報収集などでの対話
 <3>キャラクターの置かれた状況についての認識(状況認識)
 <5>世界観についての認識(世界観認識)

 「リアリティ」という観点ではむしろ必要。メインのどういう情報が行き来するかという話より、細部のちょっとしたディテールの積み重ねが大事(該当キャラクターは、食べ物は何が好き?とか)

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×:15)パクリネタ再現ルール
 <2>キャラクターについての認識(キャラクター認識)
 <3>キャラクターの置かれた状況についての認識(状況認識)
 <5>世界観についての認識(世界観認識)

 パクリネタを再現することを意図したルールってよく見ますが、これの危険なところは、「xxxネタです」という名称を一度掲げてしまうと、本当は、人によって「xxx」というものの認識は一人一人違うはずなのに、確認せずに進めて、後で認識の齟齬が露呈するという事故が起きやすいという点です。

 「xxx」という名称を提示されると、同じものを認識し合っていると勘違いしやすい。
 加えて、システムではyyyというルールで再現されてるけど、それは俺認識の「xxx」とは違う、とか、自分は「yyyというルールで再現」のつもりが「それはzzzで再現した方が妥当」とクレームが付く、とか。

 フレイムギアのサプリメントで、3身合体までというルールについて、16身合体出来ないの?とかいう批評を見るけど、実際そんなの知ってる奴がどれくらいいるの?とか、実際にやるの?とか、実プレイで使わなさそうな極端な領域で批判するのはどうなんだか、……というような問題が発生したりします。

 ということで、パクリネタを使う時こそ、コンテクストの共有について細心の注意を払う必要があります。

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4.「リアリティ」とTRPGの楽しさ
 「演劇入門」から引用すると、

>「リアル」とは、すなわち、「いま、同じ世界に生きているということ」だろう。あるいは、「いま、同じ世界に生きている感覚」と言ってもいい。

ということで、僕個人のTRPGの楽しさって何かっていうと、これそのままです。現実と比較してそっくり同じリアルリアリティじゃなくて、TRPGセッションに参加しているみんなと

「同じ世界にいっしょに生きている感じ」

というのを得られたかどうかが重要。

・「ああ、わかった」
http://simizuna.tyonmage.com/scenario/RPG_memo/rpg_memo2000-01.htm#030

ここでも昔書きましたな。

 そのためには

<1>ルールについての認識(ルール認識)
<2>キャラクターについての認識(キャラクター認識)
<3>キャラクターの置かれた状況についての認識(状況認識)
<4>話の展開についての認識(展開認識)
<5>世界観についての認識(世界観認識)
<6>プレイ結果についての認識(結果認識)

という部分のすり合わせをする必要があると考えます。

 が、すり合わせって時間がかかるので、どの部分のすり合わせをして、どこは、すり合わせをすっ飛ばして……というのは取捨選択する必要があります。トレードオフの問題ですな。

 キャンペーンとか、オンセとか、時間をじっくりかけてやるセッションの場合には、きちんとすり合わせを行った方が良いと思います。

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5.すり合わせ時間の確保
 ……というのをもっとちゃんと考えた方が良いように思います。というわけで。

 Aの魔法陣みたいに、ルールで決めてもいいし。

 SRS系のシステムって、すり合わせのためにグダグダ話し合う時間について何も規定がないので、どうしたらいいかさっぱりわからねーぜっていうか、不親切なGMに遭遇すると最悪なことになりそうかなあ、という危惧があります。シナリオを見ていると「どこの詰め込み教育か」つー感じが。

 あとまあ、オンラインセッションとか、オフセでも、事前にネット上などで話し合う機会を設けることが可能だし、最近はぼちぼちキャンペーンプレイも復興してきているので、セッションとセッションの間での対話・認識のすり合わせが重要になって来ていると思います、というか、より面白くするために利用できる。

 内輪のオフ環境が絶滅してコンベンションでしかやれない、という昔の危機的状況は解消されて、普通に大規模なキャンペーンでもガシガシプレイされるようになってますし、オンセが広まって来て?さらに、D&Dが完全にデジタル化する?という話もあったりしてTRPGのプレイ環境と時間の感覚も変わって来ているので、プレイ時間の使い方と、すり合わせ時間の確保については、今一度再考するのが良いんじゃないかと思います。



以上、そんなところで。
[PR]
by namizusi | 2010-02-13 14:57 | TRPG


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