個別導入シナリオにリサーチフェイズは必要ない

 一応断っておくが、今回のタイトルは「極論」である。いつもの論は極論じゃないのか?と言われそうだがw、いつも言っている論の話は「僕が実際いつもやっていることを理論化して説明しているだけ」なので、実践論であって極論ではない。もしかするとそれは、君のプレイ環境での考え方と著しく異なっているかもしれないが、それは君のプレイ環境と僕のプレイ環境が著しく異なっているというだけの話だ。さらに付け加えて言うなら、プレイしている場所によってプレイ環境が異なりそれによってプレイする際の哲学が異なるというのは、ごく当たり前のことだ。

 さて、今回の論も本当は実践論なのだが、実践に基づいて「もうちょっとこう突き詰められるのでは?」というところまで踏み込むので、今回はあえて「極論」であると注釈しておく。ちなみに今回言及するのは「リサーチフェイズ」であって「ミドルフェイズ」のことではないということに注意してもらいたいw。

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1.リサーチフェイズとは?
 〔research〕広く実際に当たって調査・研究すること。
  Shin Meikai Kokugo Dictionary, 5th edition (C) Sanseido Co., Ltd. 1972,1974,1981,1989,1997

 TRPGにおける「リサーチフェイズ」というのは、主にFEAR系のシステムで命名されたのだが、セッション中の中間部…導入~クライマックスの間の最終目的に到達するまでにあれこれ調査する場面のことを示す。こういう場面というのは別にFEARゲーで提唱されるシーン制とやらが出来る以前からごく自然にプレイしていたもので、ダンジョンものであれば「酒場で依頼を受ける(オープニング)」「ダンジョンを調査する(リサーチ)」「ダンジョンのボスと戦闘(クライマックス)」という組み立ては一般的に存在したので目新しさも何もないのだが(何ならD&Dのドラマチックなプレイをモデルに創出されたゲームブック「火吹山の魔法使い」を見てみたまえ)、実は「リサーチフェイズ」というものはかつてのありようから質的に根本的に変化をしてきている。
 そういう質的変化があるために、「リサーチフェイズ」とやらをプレイしている時にうまくシーンの演出意図がうまくかみ合わず、GMから押し付けられる糞つまらないシーンをたらい回しにされるだけの実に退屈極まりないセッションになる、という経験は良くあるのではないだろうか?

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2.映画版カウボーイビバップ「天国の扉」について(笑
 概念だけ説明してもわからない人にはさっぱりわからないと思うので、わかりやすい具体例を挙げる。
 「映画版カウボーイビバップ「天国の扉」」というアニメ作品がある。TRPGのシーン制でのシーンの組み立て方式というものは映画やドラマやアニメなどのシーンの組み立てを参考にしているため、こういったアニメのシーンの組み立てもほぼ同じ方法論で捉えることができる。さて、「映画版カウボーイビバップ「天国の門」」という作品だが、主人公たちは賞金首の情報を得て(オープニング)、地道に調査し(リサーチフェイズ)、最終的に賞金首と対決して(クライマックス)、事件解決する(エンディング)という展開をたどるわけだが、これがまあ実にとろとろした展開でかったるい退屈な作品なのである(好きな人ごめんなさいw)。
 どうしてそんなに退屈でつまらないのかと言えば、

・内容的にはいつも30分枠で放映していたアニメ版と同じくらいの内容量
・それが2時間足らずもの長時間に引き伸ばされている
・延びた時間は何をしているかと言うと、地道で退屈な調査シーンがぶつ切りでだらだらとメリハリもなく延々続いているだけである

という感じに、要するに先ほどのシーン制の組み立てで言うところの「リサーチフェイズ」がくどくど地道でメリハリもなくだらだらと続くため、観ていて退屈で眠くなるw。
 ところが、30分枠のアニメ版の方はと言うと、この退屈な映画版と同程度の内容量を盛り込んでいるにもかかわらずたった30分で終わらせている上、内容を理解するのに必要十分な内容はきちんと盛り込まれており、かつドラマチックな展開もある。明らかにリサーチフェイズの不必要な内容をうまく削ぎ落とし、ドラマチックに仕立てることに成功している。

 この違いは何であろうか?

 思うに、「映画版カウボーイビバップ「天国の扉」」のリサーチフェイズには、ドラマチックな物語的演出をする上で、何か、明らかにセッションを退屈にさせる余分なものが含まれており、「TVアニメ版カウボーイビバップ」のリサーチフェイズには、短い時間ながらも最低限のドラマを成立させるのに必要な最低限の情報&シーンが詰まっているのだ。

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3.「リサーチフェイズ」でプレイされる項目
 次に、リサーチフェイズでプレイされる内容を分類分けしてみる。

<1>調査項目を洗い出し、何を調査するかを決める
<2>調査結果を技能判定や会話によって獲得する
<3>調査内容を吟味し、次の行動を選択する
<4>得られる情報から犯人の背景物語への理解を深める
<5>犯人の背景物語への理解を深めることで、PCの目的設定に対する立ち位置が脅かされ、再構成される
<6>話の流れとは関係なくただPCのエピソードが描かれる

 ここで<1>~<3>の内容が旧来の調査型シナリオでプレイされてきた内容、<4>~<6>はかつては「フレーバー」としてのみプレイされた内容だが、<4>がストーリー志向になってきてGMがやたらに付け加えたがった自己満足内容で(笑)、<5>がペンドラゴン・深淵・ビーストバインド(旧)などでシステム化されたドラマをゲームとして遊ぶために付け加えられた内容、<6>はかつてはただのくだらない「雑談」「キャラチャ」「キャラクタープレイ」と取られた内容だがストーリー志向な個別導入なセッションでは入れるべきだろうなと思っている内容である。
 ちなみに先ほどのカウボーイビバップの内容でどれが描かれているかを分類分けすると以下のようになる。

・「映画版カウボーイビバップ「天国の扉」」
 <1>~<6>のすべてが描かれている。

・「TVアニメ版カウボーイビバップ」
 <4>~<6>のみ描かれている。

 つまり、こういう結論になる。

・旧来の調査型シナリオでプレイされてきた<1>~<3>の項目は個別導入なストーリー志向セッションでは不要である
・<4>~<6>をプレイすることがドラマを最低限構成するために必要で、とりわけ<5>の部分は「物語としてのゲーム」として十分遊べる、というか、そこが「個別導入物語志向セッション」で一番面白いところである

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4.現状の大多数のTRPGシステムの欠陥
 ところが、現状の大多数のTRPGシステムは重大な欠陥を抱えている。

・個別導入で、物語志向

という方向性を謳い上げているにもかかわらず、システムは旧態依然で上記に書いた<1>~<3>の部分しかゲーム的に処理することが出来ない(成功/判定だけのシステムでは<1>~<3>しか処理できないのだ。重要なのは「価値観」をいかにパラメータ化・システム化するかである)。システムのコンセプトとシステムの実装がまったくかみ合ってないのだ。

 おかげで、せっかく「個別導入で、物語志向」なセッションをやろうとしても、結局システム処理に流されて無味乾燥な情報調査するだけのセッションになってしまったり(それはそれで面白いのだが、その面白さは基本コンセプトで掲げた面白さとはまったく違うものだ。プログラム制作の観点から言うと「どんなに出来が良くても仕様を満たしていなければ一銭も貰うことが出来ない。というかそれは最悪契約履行違反で訴えられても文句が言えない」ということになる。)、うまくドラマチックな葛藤部分にPLを導いたとしても結局ルール化されてないのでうやむやに適当に逃げの対応をされてせっかくのドラマが換骨奪胎になったりする。

 ちなみに、この辺のドラマをゲーム的に遊べるシステムとしては先駆者としてペンドラゴンがあり、その二番煎じの深淵があり、さらに三番煎じのビーストバインドがあり、三番煎じ以下にもかかわらず媚びへつらったビジュアルで人気を博したビーストバインドが日本では将来的に有望株であったのだがw、去年夏のビーストバインド復活でやっと何とかなるかと思ったらシステム上最も重要な部分が骨抜きにされていて、おかげでドラマをゲーム的に遊ぶ素地というものが日本のTRPG界では少なくとも5~6年は遅れることになったと言っていいw。まあ、深淵第2版に期待ですかねえ^^;。いちおう「ダブルクロス」でロイスガチガチにやろ~とか、「エンゼルギア」でダーザインをドロドロに絡み合わせてドロドロセッションやろ~とか、「無限のファンタジア」で感情ルールバリバリカツカツプレイをやろ~とかやればそれなりに遊べるので、失望した人はその辺で耐え忍んでくださいw。ちなみに「女神転生Ⅲ」もこの辺のルールが実装されてるようです。あと「ゼノスケープ」の「日常」ルールなんかもいいルールだと思ってたんだけど、プレイしているという話はとんと聞きませんな(^^;。

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5.分析
 逆に言うと、「最近のプレイヤーはまともに調査シナリオをプレイできない」というのは、ナチュラルに上記で書いた<1>~<3>をフレーバーとしてプレイしているだけで大して考えもせず、代わりに<4>~<6>の辺に注力しているから旧来の<1>~<3>の部分を遊ぶスタイルについていけないという現象が発生しているのだと考えることが出来る。じゃあ、最近のプレイヤーの方が、ドラマチックに物語志向でTRPGを遊ぶことに長けているかというとそうでもなくて、<5>の物語上の葛藤を扱ったようなゲームには立ち入らず、結局ダイス振り戦闘ゲームをやるだけで「フレーバーとして物語をたしなんでいることには変わりがない」わけだが。こう見ると、最近のTRPGゲーマーというのは出来ることがどんどん減少してるばかりでどこも創造的なところがなく、正確に「退化している」と言った方が正しいだろうw。

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6.結論
 ということで結論をまとめる。

・個別導入シナリオで重要なのは地道に調査する場面ではなくて、得られた情報によってPCの価値観がいかにして脅かされるかという物語的展開/演出である。具体的に計画を立てて調査するなんていう部分は、はっきり言うと不要である。判定なしで情報をあげて良い。「情報を得られないことによる誤解によって発生するドラマ」までプレイしたいのであれば判定処理を入れるが、その判定処理は判定1回で決めるか舞台裏でやれば十分。物語志向という観点では地道に調査する場面なんて何の価値もない。即刻省略すること。

・むしろ回想シーンや夢のシーンや個人的な独白、日常描写こそが重要である。これを積極的に取り入れること。システム化されるとなお良い。

・以上により「個別導入シナリオ」では「リサーチ(調査)フェイズ」など必要ない。必要なのは「演出フェイズ(ディレクション・フェイズ?)」とでも呼ぶべきものである。誤解を解くためにも名前を変えるべきだw。

以上
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by namizusi | 2005-01-09 19:36 | TRPG


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