ラビットホール・ドロップスでわかる非戦闘的問題解決技法(3):(・_・)

 「ラビットホール・ドロップス(以下RHD)」というシステムからわかる、TRPGにおける非戦闘的問題解決技法について解説します(最終回)。

 前回、大体運用フローは全部書いてしまったので(そこが骨子)、今回はその補足説明と周辺事情などのメモを追記。



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1.「口プロレス」弾圧の事情と非戦闘的問題解決の問題
 TRPGで非戦闘的問題解決を推進すると、「口プロレス」になりやすいという経験的問題があります。個人的には「口プロレス」もTRPGで固有的な楽しみ方の一つなので、

・それ「も」あれば良い

と思うのですが、それでは嫌がるウォーゲーマー上がりのオールドゲーマーがいたし、今はデザイナーとか、TRPGを長く遊んできた人間の言説で、洗脳されて、「口プロレス」=悪と勘違いしちゃってる人が多いかも知れません。

 TRPGでは「役割分担」によってキャラクターの活躍する部分を分割して、楽しみを分かち合うという考え方がありますが、「口プロレス」はPL(PCではなく)の役割分担の中の一つでした。

・データに強い人間が、戦闘ルールの運用で活躍する
・しゃべりや説得のうまい人が「口プロレス」によって説得部分で活躍する
etc...

という感じにPL間で、役割分担していたわけですよ。内輪プレイとか、キャンペーンとか、気心の知れた間柄でプレイする分には、何となく役割分割してうまくやって行けた。しかし、コンベンションで単発セッションをする場合には、その辺の曖昧な役割分担が、曖昧な故にあまり機能しないという問題があったため、いったん排斥されたという事象がありました。(Aマホみたいに口プロレスの手続き自体をシステム化して生き残ったシステムもありますが……)

 当時は、

・TRPGをより広く、広めて行くためのスタイルが求められた
・関東圏(および、それに類する大都会)で、広くプレイすると言えばコンベンションが主流だった
・というわけで、コンベンションスタイルに最適化された課程で「口プロレス」も排斥された

という流れで「口プロレス」が弾圧されたという系譜がありました。その辺は「ぐだぐだ弾圧の系譜」でも同じような変遷があったことを解説しております。

 ちなみにワシは地方者だったので、るるぶを買うためにいちいち大枚はたいて都会に出てかないといかん、非常に厳しい環境だったのですが(当時はネットもありませんでしたし)、そういう環境では

・そもそも「コンベンション」など近くじゃやってないし、学生でバイトもしてなかったから遠出する旅費捻出すら不可能
・校内で仲間を集めて、手前解釈で頑張るしかない
・あるいは、せいぜいRPGマガジンの、お仲間募集で地元のTRPGの集まりを探してそこに参加する
 →それぞれの場所で全く別個のシステムを、全く異なったローカルルールで遊んでいる
 →それでもうまく混ざって遊ぶために、システムに依存しない共通的ノウハウ/言語が必要だった
 →「口プロレス」が共通言語たり得た

……というような事情がありました。要するに、都会さんのボンボンさんには「口プロレス」って都合が悪いので排斥しなきゃならんかったんやけど、地方者にとっては、生き残るために必要だったんじゃあ、と言いたいw。

あるいは

・無限の可能性の中からたった一つの正解を当てさせるという「脳内当てゲー」GMの無理ゲーに対抗するために、PLが考えた正解を無理矢理押し通す技法として育まれた生活の知恵が「口プロレス」である

……というような事情で生まれた技法が「口プロレス」なわけで、なので地方者としては「口プロレス」があるのが順当な流れであって、関東とかごく一部のローカルの遊び方のためだけにそれを否定されるのはいかがなものかという。そんなところはあります。

 まあ、今ではネットが普及して情報・ノウハウ・ルールブックが、地方・都会に関係なく、手軽に取得出来るようになりました。プレイ環境もオンセなどで、同じメンツで複数回遊ぶのが(単発で終わることが難しい関係上)主流となりつつあると思うので、そうすると

・コンベンションで単発プレイ

を基準にスタイルを考えるのは、もはや時代遅れではないかと考えます。で、「コンベンションで単発プレイ」ではない環境を想定した場合は、今までの考え方では合わない部分が多々出てきますから

・ぐだぐだ遊ぶ
・「口プロレス」も混ぜる
etc...

という要素も、再考してみる余地があると考えます。

 ……まあ、Aマホとかで、口プロレス方面でうまい人を「エース」とか言って称揚するのは、気持ち悪くてしょうがないというのはありますがw。そんなに持ち上げるほどのモノでもないと思いますけど、TRPGの「物語を創出する面白さ(ナラティブ)」の一手法として「口プロレス」も、あっても良いかなあと考えます。

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2.RHDの非戦闘的問題解決では「口プロレス」の要素はない
 ……とか何とか、

・今こそ「口プロレス」再興!

な話を書きましたが(笑)、前回書いたRHDの非戦闘的問題解決のフレームワークでは、実は、基本的には「口プロレス」の入る余地はありません。

 「口プロレス」というのは、PLが考えた問題解決方法を無理矢理GMに納得させて押し通させるための技法ですが、RHDの非戦闘的問題解決フレームワークの考え方は

・RHDでは、非戦闘的問題解決方法は19個と規定している
 →「RHDの19コマンド」

・シナリオであらかじめ、「RHDの19コマンド」のどれで判定成功したら問題解決出来るか、決めてセッションに臨むので、GM自身がプレイ中にシナリオ自体を書き換えない限り、「PLが考えた問題解決方法を無理矢理GMに納得させて押し通」す、というのはない

 ……というわけで、RHDで口プロレスがまかり通るのは、GMが望んだ選択の結果であって、別に選ばなくてもセッションは成立するし、PLの責任ではない。システムの問題でもない。

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3.非戦闘的問題解決を加味したシナリオ構成
 課題1個だけだと、一瞬で問題解決して終わりになってしまうかも知れない、という問題(システム要件としては「一時間で終る」と言ってるので、一瞬で終ってしまっても全く構わないと思いますが)に対する対策としては下記があると思います。

1)「三つの試練」方式
 以前、こんなのを書きました。

「3つの試練型セッション(仮名)」を提唱してみる:(・_・)

 1個の課題だけだと、時間コントロールの幅が広がって管理が難しくなりますが、3個の課題にすれば、平均化されて時間コントロールしやすくなります。1d6よりも3d6の方が、出目の振れ幅が狭い(標準偏差が小さくなる)、の理論に基づいています。

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2)アドベンチャーパート/アクションパート
 D&D4th何かで提唱されている、古式ゆかしいスタイルです。要するに

<1>発想力で解決するゲームを入れる(調査/ミニゲーム)
<2>ポイント積上げで解決する課題を入れる(戦闘)

という構成です。上記で「PLの役割分担」の話にちょっと触れましたが、TRPGというのは黎明期から、<1><2>の二つのゲーム性のゲームを混ぜ合わせることで、プレイの多様性を出すとか、PLの多様な要求に応じやすくするとか、そういう工夫がされて来ております。

 最近のボードゲームに当てはめて考えると

・前半のゲームは「Dixit - ディクシット」とかの発想ゲー
・後半のゲームは「カタンの開拓者たち」とかの育成ゲー

という複数のゲーム性のゲームを遊んでる感じになります。

 TRPGというゲームは、こんなように複数のゲーム性のゲームを混ぜ合わせて遊ぶ、遊びでもあるのです。

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4.RHDの非戦闘的問題解決フレームワークの懸念と特徴
懸念1:「非戦闘的問題解決」というと、PLの発想力を求められがちだが、発想出来ない人がいる
 PCが取り得る非戦闘問題解決方法は19個と決まってますので、思い付かなくても、全部網羅して試せば、いつか正解にたどり着くでしょう。

懸念2:総当たり方式って面白いのか?
 人間には空間充足欲求というモノがありまして、要するに全部揃えたいという欲求がありますから、全部のコマンドを試して全分岐を埋めていくだけでも、ある程度楽しめます(ノベルゲーのコンプリートとか)。
 埋めていく課程で明らかになっていく情報(物語)で楽しませることも出来ます。
 緊迫感が欲しければ、時間制限(手番制限)などを加えると良いでしょう。

懸念3:総当たり方式ってただの運ゲーでは?
 情報の出し方によります。「何が正しい選択か」という因果関係を決めて、それに基づいた情報を与えればゲームになりますし、そうじゃないなら運ゲーになります。ただの運ゲーでも「当たっただけで嬉しい」という感情は発生しますので、それで十分とも言えます。重々しい雰囲気が欲しければ

・「運」→「因果律」「運命」「業」

とか言い換えるだけでOK。

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5.RHDの非戦闘的問題解決を、謎解きゲー化するための考え方
 RHDのフレームワーク自体に謎解きの要素はないのですが、情報の出し方によって謎解き要素を加えることが出来ます。TRPGシステムとしては「霊障都市捜査ファイル」なんかが、考え方の参考になります。

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 ボードゲームでは謎解きゲーって結構ありますが、

・「クルード」
・「スルース」
・「切り裂きジャック事件」
・「インコグニト」
・「人狼」
・「(Chillのボードゲーム)」
etc...

辺りが参考になります。ポイントは

・どういうヒントを出すことで、ゲーム的仕掛けを提供しているか?
・「ヒントがないのが最大のヒントである」

です。

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 あるいは、パズルで「論理パズル」というのがありますか、あれも参考になります。

 「スパイは誰だ

 これなんか良い感じ。こういうヒントを出します。あるいは、最初はテキトーにヒントを出しておいて、あとからこの論理パズルのように、足りない情報を埋めていくと結果的に情報が論理パズル化してゲームになります。

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 あるいは、推理小説(本格)で「読者への挑戦状」が付いた作品の構成も参考になります。推理小説での謎解きの考え方は

1)境界条件を探し当てる(ミスディレクションあり)
 例)
 殺人事件が起きた。犯人は誰か?
 →要するに、この事件の謎は、この時間にいつもと違うカツラを被っていた男は誰か?
  ……という問題に還元することが出来る、とか

2)境界条件が明らかになったら、そのあとは、条件に基づいて消去法や論理パズルで正解を導く
 ・誰が「男」か?
 ・カツラを被っているのは誰か?
 ・件の時間に、いつもと違うカツラを被っている、という状態があり得るのは誰か?
  →屋敷のプールで水泳をしていて、キャップで頭の見えなかったAだ! とか



こんなところで。この連載はこれで終わりです。んじゃま~。
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by namizusi | 2012-08-25 12:47 | TRPG


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