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「ハウルの動く城」とソフィーにかけられた2つの呪いについて

 「ハウルの動く城」は個人的に大好きな映画で、ただ内容が難しいので人には勧めないのですが、その映画を見た友人とかが「よくわからない」とか「どうして若返ったり年をとったりするの?」とか「最後は呪いは解けたの?」とか「ソフィーはいつハウルを好きになったの?」とかしつこく聞いてくるんで(^^;、自分なりの解釈を書いておきます。

 うーむ。こういうこと考えて観んのかね、最近の人間は。深読みして見てあげないと、作家が高度で深い作品が作れなくなっちゃうんでかわいぞうじゃないか、とか、個人的にはしみじみ思いつつ。

1.どうしてソフィーの外見は若返ったり年をとったりするんですか?
 昔の漫画の世界だと登場人物の外見そのものを描き変えちゃうことで、その内面描写をするという演出法がありました。「漫画的直喩」とでも言うんでしょうか。手塚治の漫画を見るといっぱいあるんで見慣れてるんですけど、最近の人はそういうのを見ないから理解できないらしいのう。
 松本大洋の「花男」なんかだと、「そんなばかなー」と嘆くリアリストの主人公の小学生がめっきり老け込んで外見が年寄りになり、その話を聞いて駄菓子屋のばあさんが「若返るねえ」とピチピチの若い女性の外見に変わる、というような表現があります。

 ちょっと微妙なのは「ハウルの動く城」というのは「ファンタジー」であるので、非ファンタジーでは「直喩はあくまでただの直喩で、作品世界内での『現実』ではない」という暗黙の了解があるのですが、「ファンタジー」では、「本当にそういう外見にしちゃう」という前衛的な表現手法があります。「ハウルの動く城」はそういう領域までちょっと踏み込んでますな。

2.ソフィーがハウルを好きになったのはいつですか?
 2つタイミングがあります。

<1>最初の遭遇
 ここで一目ぼれでしょう。宮崎駿ってほとんど一目ぼれしか描かんのだがw。

<2>ソフィーの部屋を作った場面
 ハウルが城の内装を変更するときにオープニングのソフィーがいた部屋そっくりの部屋を作って見せます。ぜんぜん気がなさそうだけど、実はソフィーのことをずっと見てたんだよ(ストーカーだ)という演出。ここで確定ですかね。

3.ソフィーの呪いは最後解けたんですか?
 重要なのは、正確にソフィーにかかっていた呪いというのは2つあります。

<1>西の魔女にかけられた外見が老婆になる呪い
<2>ソフィーが自分自身にかけた『老婆の心』の呪い

 この作品では上記の2つののろいが同期して表現されているところに意味があります。ちなみに『老婆の心』というのは

・自分は取るに足りない役に立たない存在だ
・どうせ望んでもかないっこない。さっさとあきらめよう

というような後ろ向きな心です。誰でも多かれ少なかれ思い描く感情でしょう。で、重要なのは、エンディングでソフィーはハウルの愛を勝ち取り、望みをかなえることで自ら課した『老婆の心』の呪いを解いたというところです。で、「ファンタジー」では、そういう内面的解決や展開がそのまま現実に反映されるのです。それをメルヘンファンタジー的文法と言います(と勝手に定義)。

 だから最後の場面は、ソフィーの内面の呪いが解けたので、外見の呪いも解ける。髪の色が白いままなのは、彼女の成長の証である、ということになります。

 うーむ。まさしく、本質的に正真正銘の「ファンタジー」ですな。表層だけ取り繕ったふぁんたじーもどきとは大違いだw。


んではまた
by namizusi | 2005-03-30 12:52 | ストーリーメディア


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