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パクリと著作権とTRPG:(・_・)

・「著作権の世紀」
 http://www.bk1.jp/product/03224546

を読んで、ちょっと整理してみました。

あと関連で「金田一少年の事件簿」をググってみて、げんなりしたw。



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1.パクリとは何か?
 辞書を見ると「盗む」とか書かれてますが、「著作権の世紀」で書かれていることで重要と思われるのは

・パクリであるからと言って著作権違反というわけではない
・著作権違反ではないパクリは、批評によってクリエーターに「モラル」を問うしかない(問うべき)

というところでしょうか。あと、著作権とパクリの話が結構ごっちゃにする人が多いというか。

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2.著作権の意義
p.15から引用すると
>一定期間作品が無断利用されず、利用からは対価が得られることで、創作者とそれを支える人々が作品で生活の糧を得る機会を保証する。それがさらなる創作の原動力となる(以下略)
と、書かれております。

「金田一少年の事件簿」の話で言うと、

・トリックネタをパクられた作品が、映画化しようと考えていたのが、断念することになった

という話があるそうですが、これは

>それがさらなる創作の原動力となる

に抵触すると考えられます。

・トリックネタを知らずに読んで、後で元ネタの作品を見てがっかりした

というのは著作権上の問題としては取り扱われておりません(著作権では、著作者側の権利は言及されているが、情報を得る側の利益/不利益については触れられていない)。

ただ、「モラル」の問題として、批評の対象にするのは可能だし、より品質の高い作品を求めるなら批評すべきでしょう。

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3.TRPGは著作物か?
 著作権の考え方では「公共物は著作物ではない(著作権で守られない)」という考え方があります。日常的な道具(食器とか~)が著作物扱いになって、権利者の許可なく使ったり売られなくなったら困るでしょう?ということで、公共的にみんなが使うものについては著作権は認められないそうな。

 それから、作品として完成したもの(著作物)でなければ著作権は認められません。

 素材とか、アイデアは著作物ではないので、著作権の対象になりません。

 そうすると、TRPGってそもそも著作物と言えるのかどうか、という問題が発生します。TRPGのルールって、それだけで完全に遊べるかというと、プレイする人間がキャラクターを作ったり、プレイするシナリオや状況に合わせていろいろ設定/データを作らないと遊べないんですよね。

 TRPGという遊びをするための不完全(著作物として不完全)なツール(公共性)でしかないTRPGが、著作物であるかどうかはグレーゾーンかなあと。

 書籍として、著作物扱いに出来るかな、という感じでしょうか。

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4.素人作品でも著作物である
 製品として売られたり、名のある人の作品だけが著作物として扱われるわけではなくて、素人の作った拙い作品でも著作物として認められるようです。

 僕の場合TRPGに関するアイデアをブログ上でいろいろ書いてますが、これ自体はアイデアでしかないので著作物となりませんが(ブログの記事自体は著作物になるかな)、そのアイデアを使用したシナリオを書いたりしてると(そういうシナリオもいくつかあります)、それは著作物として認められる可能性がある、ということです。

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5.一部のルールを借用することは著作権違反かどうか?
 一部のルールだけというのは、それは作品のアイデアだったり素材でしかないので、それをパクったところで著作権違反になるかは微妙なところのようです。

 ただし、「作品のキモとなるアイデア」というものがあって、本格ミステリなんかだとトリックが作品のキモだったりするのですが、これがパクられると、著作権違反にはなりませんが、ネタばれされて作品が大損害をこうむることがあります。

 そこは「モラル」の問題として批評して行くしかない。

 ゲームの場合には、ゲームを面白くするメカニズムのアイデアというものがあって、これがルールやデータとして出来ているのをパクってくると、それは問題としてとらえるべきかと考えます。

 R&Rvol.60の「銀爺のゲーム三昧」に、著作権に言及した記載があるのですが

--引用--
アイデアに著作権なし
 編集時代、「アイデアに著作権なし」と教えられた。では、何に著作権があるのかというと、「そのアイデアが具体的な形をとったものに」発生するのである。
 (中略)
 しかし、それが0・3・6というコストと結びついたところには、著作権がある。特に「0コスト」は、ゲームシステムの根幹に関わることだけに、それと同じことをしたら、訴えられても仕方がないだろう。
--引用--

 まあ、実際、著作権違反になるかどうかは微妙なところではある、と考えられますが、ただ、少なくとも、作り手の「モラル」として、そこがゲームの面白さのキモであるという部分をパクるのは、問題であると言って良いかと考えます。

・◎ [TRPG]キャリアシステム
 http://western.blog.shinobi.jp/Entry/189/

 こちらの記事で取り決めをしてる話が出てて、へえ~とか思ったりしました。

 そもそも、著作権というのが非常にグレーゾーンが多くて微妙(時期によってOKになったりNGになったりする)なものなので、

・「訴えられなければOK(黙認)」

なところがあるようです。コミケなんか、パクリ三昧ですが黙認されていますよな。

 問題が発生しやすいのは

・「無断で」借用
・「無断で」改変
・既存のマーケットに問題が出る

でしょうか。

 この辺の一部ルールとかメカニズムのパクリについては「キャッスルフォルケンシュタインの判定ルールはN◎VAの判定ルールをパクってるんじゃないのか?」とか、「まじしゃんず・あかでみいRPGのインパルスシステムは、ペンドラゴンの性格のルールのパクリじゃないのか?」とかいう疑惑があったりしますが、これを著作権違反として訴えることは困難(というか、元の著作者が訴え始めない限り問題になることはない?あるいは、何か取り決めがされているのか?)だが、作り手の「モラル」の問題として


・そういう安直な作り方はいかがなものか?


と、問いかけるべきではあろうかと考えます。

 著作権として訴えようとすれば前後関係などを明らかにする必要がありますが、そもそもこんな細かいスポットルールに対して著作権を立証するのは困難である以上、前後関係を明らかにすることにあまり意味はないかと。

 それ以前に、前後関係がどうなのかは


・作り手自身が知ってること


なので、別に証明する必要もなくて、そこに


「あなたの『モラル』はどうなってるのさ?」


訴えかければ良いかと(批評などで)。

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6.名称さえ変えればOKなのか?
 あとまあ、メカニズムをパクって来てるんだけど

・名称さえ変えればOK?

という問題もあって、例えば深淵の「プロローグ」なんかは

・「プロローグ」
・「個別導入」
・「個別の導入」

など、さまざまな言われ方をしているが、というか、パクってる意識があるから名称を変えているというところがあるように思われますが(敬意の現れ?)、ユーザ側としては


「同じことなのにいちいち名称が変わるのは、実にユーザビリティの低い対応だ」


と言わざるを得ない部分もあるように思います。この辺はTRPGというものが、著作物というよりは


・「公共物」で(も)ある


というところから発生する問題と言ってよろしいかと。

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6.複合作品・多次作品
 既存のものを組み合わせて新たなものを作り出す手法。

 TRPGの場合は、1個のスポットルールだけで作品(システム)が出来てるわけではなくて、全体を組み合わせることで1個の別の作品になっているという部分があったりします。

 だったら良いのか?という話については、日本の著作権の考え方では1個1個が著作物であると捉えるなら、全部の要素について許諾が必要になります。日本の場合、基本的に出版社かデザイナー会社が権利を持ってるんですかね。どこまで権利を持ってるのかは謎なのですが。他メディアに移った時の権利はどうなるの?とか、改変した場合はどうなるの?とか。厳密にやると非常に大変なので(権利の確認をするだけで多大なコストがかかる場合あり)、黙認されている部分もあると考えられます。

 既存のネタを組み合わせるとこと新たなものを作り出す、ということで創造性が促進される部分もあるので、そこはむしろ好きにパクリしてもOKにすべきという論もあるようです。

 TRPGのセッションとかセッションログとかリプレイとかで、いちいち著作権を主張しだすと、大変だ、とか。

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7.パクリネタ再現ルール
 TRPGというものが非常にメジャーになってマーケットを占有するようになると、問題となり得るように思われるのですが、著作権の問題というのが基本的に

・パクリなどで情報が知れ渡ることで、むしろ宣伝になってより元の作品が売れるのであればOK
・パクリなどで情報が知れ渡ることで、元の作品が損なわれるのであればNG

というものなので、現状みたいに規模が小さければそんなに大々的に社会に影響が出ることはないので、グレーゾーンで黙認されるのかなあと。

 時代によって基準も変わりますし。

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8.「ライセンス」とは
 ライセンスというのは「この規定に従えばパクってもOKです」という権利者側からの宣言なので、きちんと従うか、違う借用を行いたいのであればきちんと許諾を得ましょう。

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9.個人的まとめ
・著作権違反でないパクリは、クリエイターの「モラル」の問題
・このパクリは「モラル」として問題あるんじゃない?というのは、訴えるべきかと
・「公共物」化している汎用的ルールについてはユーザビリティのために用語を統一して欲しい
・素人作品でも著作物だ
・組合せによって新たな作品が出来るようにするために、あえてパクリをOKにする考え方もあって、現状はお互いパクリ合って膨らませて行く段階なのかもしれない
・パクリネタ再現ルールは市場規模がでかくなるとやばいよね(笑
・ライセンスはちゃんとチェックしましょう



そんなところで
by namizusi | 2010-02-15 03:54 | TRPG


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