「導入部」でやることについて:(・_・)

 いまどきのエンタメ系ストーリーの面白さを志向したセッションをする……って、毎回書くと長くてしょうがないので、今後は省略して「ストーリー志向」と呼ぶことにします……ための、物語の構成手法をTRPGに当てはめるとどうなるか、論の続きです。

・キャラクターとは何か
・内面的ストーリー、外面的ストーリーの特性と違い
etc...

の懸案事項が残ってますが、それは気が向いたときにまたどこかで解説することにします。今回は本論を進めて、導入部をどうプレイするかという話を。

 ちなみに、本論のマイルストーンとしては

・中盤の展開部の構成
 特に、現状のTRPG環境で決定的に欠落している構成について

・クライマックスの構成
 ・クライマックスに向かう心構え~「英雄」と「正義の味方」の違い
  「正義の味方」という仮面について
 etc...

というような話を書いていこうかと思います。



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1.ハリウッド映画の導入部の構成
 ハリウッド映画の導入部の構成は以下のようになっています。

1)キャラクターの紹介(およびその生活空間の紹介)
2)今回のストーリーへの動機付け(セットアップ)

 近年の映画でこの辺がシステマチックに構成されてるものとして「リトル・ミス・サンシャイン」という映画がありますが、それはこんな感じに導入されます。

<1>各主要キャラクターが1人ずつ登場
 ミスコンにあこがれる主人公の少女
 マリファナ?か何かを吸ってる爺さん
 自殺未遂のおじさんと、それを引き取りに来るお母さん
 沈黙の行を課しているお兄さん
 ビジネス本の講演会をやっているお父さん(しかし講演参加者は少ない)

<2>一家の食事の場面
 全員が一堂に会して食事をする。
 ここで、各キャラクターのより詳細なディテールや、
 キャラクター間の関係性などが分かる。

<3>電話がかかって来て、主人公がミスコン出場することに決まる

で、これを上に書いた1)、2)にあてはめると

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1)キャラクター紹介
 <1>キャラクターの個別紹介
 <2>キャラクター同士の団欒

2)動機付け
 <3>ミスコン出場の電話がかかってくる
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という風になります。ここで重要なポイントは

・キャラクター紹介の方が、事件への導入よりも先である
・キャラクター紹介は、個別の導入と、集合シーンの2段階で行われている

の2点です。

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2.キャラクター紹介の方が、事件への導入よりも先である
 どうしてキャラクターの紹介の方が事件の導入よりも先になるかと言いますと、ストーリーの三要素というのがありまして、それは

1)キャラクター
2)事件
3)背景設定

の3つの要素からストーリーは出来ているという話なんですが、本論で言う「ストーリー志向」で扱う「ストーリー」というのは「キャラクター重視なストーリー」ですので、だから、一番重要な「キャラクター」が最初に出てきて、そのあとに、背景設定とか事件とかが出てくることになります。キャラクターも事件も背景設定も、ストーリーを構成する上では重要で必須ですが、どれか一つを選ばなくてはならないという状況が来た場合には一番に「キャラクター」を選び、「事件」「背景」は二の次にする、というのがいまどきのエンタメ系ストーリーのスタンスです。

 これをTRPGにあてはめると、大ざっぱに言うとこうなります。

1)キャラクター
 →PCやNPC

2)事件
 →シナリオ

3)背景設定
 →システム(ワールドガイドとか)

要するに、上の話をTRPGに置き換えると

「ストーリー志向では、
 まず何よりも『キャラクター』を最重視し、
 『シナリオ』や『ルール』は二の次とする」


ということになります。

 で、ここで注意を喚起したいこととしては、

・もしあなたが「ストーリー志向」なセッションをやっていた場合、実際に「『キャラクター』を最重視する」というのが出来ていますか?

というところです。シナリオをさっさと進めて事件を展開させたいという欲求に駆られて、PCの紹介がおろそかになっている、ということはないでしょうか?

 ということで「ストーリー志向」でプレイする場合、序盤に注意すべき点としては、

・主要なキャラクター(特にPC)が、セッション参加者全員にちゃんと認識されてますか?

というのをチェックして、それが出来たところで先に進めるのが良いです。事件の説明とか、背景世界の説明とかは、時間がなければ後回しでも良い。メモ書きでもいいし、事情をわかってるPLに説明してもらってGMはその背後で先の準備をする、とかでも良いです。

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3.個別導入があればキャラクターの紹介がちゃんと出来るか?
 キャラクター個別の紹介が出来ているかの件で、個別導入のあるシステムでは出来ているが、そうでないシステムではテクニックで補うしかない? という話を見たことがありますが、それは間違っています(きっぱり)。

 例えば「各キャラクターの自己紹介をするかどうか」については、別の個別導入であろうがパーティー制なシステムであろうが関係なく習慣的に自己紹介くらいはするところが大半と思います(経験上)。じゃあ、個別導入のあるシステムであれば、キャラクターの紹介をするのがルールとして明示されてるから良いんじゃない?という疑問も出てくるので、念のために個別導入をするシステムで比較的新しいDX3を見たのですが、それを見たところだと「どのようにPCを事件に関わらせるか」の導入方法は書かれていましたが、「PCが何者であるかを紹介する」という話は何も書かれてませんでした。要するに

1)キャラクター紹介
 個別導入のあるシステムでもどう扱うか、何も書いてない

2)動機付け
 導入方法のパターンを細かく説明している

というわけで、本論の主張としては1)を最重視して2)は二の次で良い、と言ってるんですけど、DX3のルールに従うと2)はルールで明示されてるためしっかりプレイされるが、1)がちゃんとプレイされるかどうかは環境による……場合によっては2)が優先されて1)がバッサリ捨てられることすらありえる、2)について、ルールで明示してしまったがために。という問題があります。

 まあ、いずれにせよ、個別導入があろうが無かろうが、現状の導入部のルールでは、ストーリー志向をするのであればキャラクターの紹介は必須であるにもかかわらず明文化されてないという問題があるので、明文化するのが良いと思います。いやそんな、キャラクター紹介なんて常識的にやるでしょう~という人もいると思いますが

「常識と思われてることほど、明文化しないとやらない。きちんと明文化すべき」

と、ドラッカーも言ってますので(かなり曲解してます(笑))、明文化するのが良いと思います。

 ちなみに「どこに明文化するのが妥当か?」については、キャラクター紹介なんて毎回毎回慣例で行うことだし、PLによって千差万別に変化して書きようがないので、シナリオに書くよりは、セッションのフレームワーク上に明記するのが良いと思います。

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4.キャラクター紹介は、個別の導入と、集合シーンの2段階で行われている
 前に書いた記事で

1)描写
2)説明

という、物語表現には2つのモードがあるという話を書きましたが、個別の導入、集合シーンをこの表現形式にあてはめると

・個別の導入→説明的
・集合シーン→描写的

と、当てはめることが出来ると思います。で、「リトルミスサンシャイン」の導入部では説明文的紹介と、描写的紹介の両方を行っています。説明文的紹介と、描写的紹介の特徴としては

・説明文的紹介
 キャラクターに関する明示的な属性が分かる

・描写的紹介
 キャラクターの雰囲気、関係性が分かる

ということで、両方を合わせ技的に導入することで、より豊かにキャラクターを表現できるようになります。

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 で、これがTRPGではどうなっているかというと、個別導入のシステムではちょっと問題があって

1)キャラクターの自己紹介
2)個別導入で動機付け
3)集合シーン

……という感じに2)と3)の順番が入れ替わってしまって、キャラクターの紹介部分がぼやけてしまうという現象があります。実際のセッションでもキャラクター個別の個性はしっかり主張できるけれども、PC同士の絡みがさっぱり動かず最終的に人のPCはどんな奴だったかすらわからないまま終わってしまう、という事態がしばしばあります。いちおう、この構成の問題点を改善しようとした?イレギュラーな導入をしたりプレイとして、DXのリプレイ・トワイライトで

1)PCの自己紹介
2)突然集合シーンでキャラクターの関係性を演出
3)回想シーンで個別導入

という導入がされておりましたが、いまどきのハリウッド映画的エンタメストーリーでは、こちらの構成の方がスタンダードな構成となります。

 個人的には「事件に関わる前のPCたちの関係性(日常)」というのを、事件が始まる前に描いておくと、最後にまた各PCたちが事件が終わって日常に戻ったときに、同じ関係に戻る、という対比表現が出来て、かつ、事件を経てPC間の関係が変化したのであれば

1)事件前のPC間の関係性
2)事件中のPC間の関係性
3)事件後のPC間の関係性

という3つの関係性があって、1)と3)を比較対照することで「PCの内面にどんな変化が起こったか」を差分で綺麗に表現できるようになるので、

・導入部で、事件に関わる前のPCたちの関係を描く場面を入れる

というのはキャラクターに感情移入させてストーリーを面白く見せるのにとても効果的だと思います。

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 ちなみに、上記のハリウッド映画的構成に近い導入としては

・酒場での導入

というD&D以来の古式ゆかしい導入が非常に近くなります。実プレイでは

1)キャラクターの自己紹介→個別導入
2)酒場で各PCが各々好きなようにふるまう→集合シーン
3)酒場の主人や、闖入客が依頼をする→動機付け

という感じになります。D&Dの最初の最初の段階で、すでにエンタメとして必要な構成は完成されてたってーことですな。

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5.キャラクターの紹介にかける時間
 キャラクターの紹介にどれくらいの時間をかけるかについてですが、やたらめったら長い時間をかけても、視聴者が飽きてしまいますので、ほど良い長さの時間というものがあります。ちなみにハリウッド映画的ストーリー構成の場合

・全ストーリー時間の10%

が、適当と言われております。2時間、120分の映画だったら、映画の開始から12分以内に

・今回のストーリーの主要なキャラクターはどういう奴か?

を紹介するのが体感的にちょうど良いそうです。

 ちなみにTRPGの場合、6時間セッションだとキャラメイクに1時間くらいかかりますので実プレイは5時間(300分)くらいとなりますが、同じ割合で配置するなら

・キャラクターの紹介はプレイ開始30分

ぐらいで行うのが妥当と思われます。ちなみに「導入部」全体の時間は、全ストーリー中の4分の1ぐらいの時間をかけるのが適当だそうですので、TRPGでも同じ時間配分にすると

・導入部は75分

ということになります。なので

・キャラクターの紹介:30分
・導入の動機付け:45分

て感じになりますでしょうか。実際は休憩時間とかも間に入って来ますので

・キャラクターの紹介:30分
・導入の動機付け:30分
・予備:15分

ぐらいに見積もっておくのが妥当そうですかねえ。

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まとめ
 ポイントをまとめますが

・導入部でPLが好きにPCを紹介できる場面30分くらいはくれ!
 (システム/フレームワークで保証してくれると良い感じ)

・導入部で、まず真っ先にキャラクターの紹介をしましょう(30分くらいは見積もっておく)

・「キャラクターの紹介をする」というのフレームワーク/システム等で明文化した方が良いと考えます

・導入部で「日常的集合シーン」をやるのも効果的。導入の検討をしてみるのもよろしいかと

・「PCが何者であるか?」が行き渡った後で、事件の動機付けや背景の説明を行う。
 時間がなかったら後回しにするなり、メモ書きで渡すなりでも良い
 「どんなキャラクターか?」
 という認識を行き渡らせることを何よりも優先する

・導入部の時間割り振り
 ・キャラクターの紹介:30分
 ・導入の動機付け:30分
 ・予備:15分

こんな感じでしょうか。



ということで、今回はこれまでとします。
んじゃまた
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by namizusi | 2010-08-30 21:23 | TRPG


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