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話の膨らませ方(4)

 第4回である。第1~3回を予習した上で読むこと。
 今回はTRPGで使用する「強いネタ」には具体的にどんなものがあるのかについて解説する。

1)顕在設定と潜在設定
 TRPGのセッション中に投入する「強いネタ」には大きく2つの種類がある。その2つが「顕在設定」と「潜在設定」である。以下にそれぞれの概要及び具体例について解説する。

2)顕在設定
 読んで字のごとく“目に見える公開された設定”のことである。具体的に言えばそのPCのキャラクターシートを見てみたまえ。そこに書いてある。そういう設定である。PLがPCの設定として記述しているということは、そのPLはそのPCを記述した設定のとおりに動かすと宣言していることになる。なので、GMは気がねなくそのネタをセッション中に使うことができる。そういったネタを使用したにもかかわらずまともなリアクションをしようとしないPLは、前回言ったとおり“タコ”であるので人間扱いをする必要はない。

 ちなみにこういったPCに関する詳細設定を自発的に書くPLというのはそんなに多くない。が、システムでそういった設定を考えるようにパラメータ化したりして指定するシステムは存在する。例えば、ペンドラゴンの「対人感情ルール」、深淵の「縁故」、ダブルクロスの「ロイス」、エンゼル・ギアの「ダーザイン」、NOVAの「コネ」、FEARゲー一般で使用されている「セッション開始時のハンドアウト」などである。これらの対人感情・設定ルールというのは、それらをTRPGにおけるゲームの要素として使用すること宣言していることになる。それらのシステムをプレイする時はそこに留意してPCの人間関係についても考えてみよう。人間関係システムを実装していないシステムではそういったプレイは必ずしもゲームとして組み入れられていない「フレーバー」に過ぎないが、実装しているシステムではそれはTRPGのゲームをする上で考えることが必須である重要な要素となる。そういったシステムを選択しているのにもかかわらず考えないPLというのは要するに

・ゲームを放棄している

のと同じことになる。だから何度も言っているが「“タコ”である。人間じゃない。」と、僕は言うわけだ。よいかなw?

3)潜在設定
 次に、潜在設定である。潜在設定というのは読んで字のごとく、公開されていない目に見えない設定のことである。具体例を挙げると以下の通りである。

・PCの両親・兄弟姉妹・肉親・友人・幼なじみ・恩師・仕事仲間・恋人・配偶者etc...
・PCは人間であり、どこかしらから生まれてきた
・現在何らかの職業についており、どこかで生活している

「多くの場合PCは人間である」というのを前提に書いているが、キャラクターシートに明示的に書かなくても、ただそのPCが人間であり、生きている(とイメージする)のであれば、必然的に上記に書いたような設定が付いてくることになる。したがってGMや他のPLは、これらの設定を使用してそのPCにアクセスすることが「暗黙的に、常に」可能である。ちなみにこれらの設定を使ってそのPCにアクセスした際に、そのネタに対してまともにリアクションしようしないPCというのは、端的に言うと

・人でなし

である。間違いない。よってそんな“人でなし”PCをまともに人間扱いしてセッションを進める義理などカケラもないので好きに料理するように。まあ、一部「バイオレンス」のように「人でなしPCをプレイするのに特化したシステム」というのも存在するので、そういったシステムをプレイする際には逆に「そういった潜在設定を使用したときにPCからまともなリアクションが返ってくると考えてはいけない」。

4)潜在設定の使用は「お約束パターン」の導入に繋がる
 さて、潜在設定を使用するときには、基本的にPCはアドリブでリアクションしなくてはならない。公開されていない設定なのでそれについて事前に考えることが出来ないからだ。よって、担当するPLは、

・(PL自身がお約束的と考える)お約束的リアクション

を返すことになる。具体的に言うと、フロイトの精神分析を参考にするならw

・異性の親には親愛の情を示す。動性の親には親愛の情も含めたライバル意識を示す。異性の兄弟姉妹に対するアクションは異性の親へのアクションに似る。同性の兄弟姉妹に対するアクションは同性の親へのアクションに似る
・仕事関係の相手には仕事関係的な距離を置いた人間関係によるリアクションになる
・恋人/配偶者へのリアクションは親密なものになる
・幼なじみへのリアクションは微妙なものになるw
・恩師へのリアクションは尊敬の念を意識した多少距離を置いた、しかし好意的なものになる
etc...

こういったりアクションが来ることを期待してGMは潜在設定を投入する。大枠はそのとおりに返ってくるが、細部はPL一人一人価値観や表現の仕方が異なるため、異なった反応になる。
 マスタリングをする上で留意する点は

・大枠が思惑通りのリアクションでありさえすればセッションが滞りなく進むようシナリオを設計しておく
・そうしておけば、大枠では高確率でPLからパターンどおりのリアクションが返ってくるため、事前にリアクションがどうなるかを先読みして話の展開を構築することができる

ということである。よく「自由にしてしまうとPLがどういうリアクションをするかわからないのでシナリオが組めない」とか言うが(ほんとか?)、僕に言わせれば、ここまで書いた「強いネタ」を使用するのであれば、リアクションがパターン化されるので「読める」。実際、本当に大枠でのリアクションの方向性殻外れるような根本的な方向転換を促すリアクションをする創造的なPLなど、この世の中には滅多にいない。本当にそんな事態が発生したのであれば、それはそれこそ「先の展開をじっくり考え直す格好の機会」であるので、じっくり腰をすえて話し合うなり何なりした方がいいだろう。

5)顕在設定・潜在設定はPCへのアクセスインタフェースである
 PCの設定を考える時に、他のPCやGMからアクセスされてそのイメージが崩されることを恐れて外部から影響を受けないような自己満足的設定を考えたがり、それを「PCの設定をきちんと考えることである」と勘違いしている愚かな人間が多いように感じるのだが(ほんとか?w)、TRPGというのはコミュニケーションの遊びであるので、そうやってイメージを書き換えられるのが当たり前のことであり、それが面白みだと思う。いや、そういうのが嫌なら、そもそもTRPGなどやる必要はないわけで、一人で小説でも書いていればいいのだ。面白ければ読むんでw。

 それはともかく、PCの顕在設定・潜在設定を使用することはPCを面白く演出し、引き立てることに繋がるし、そういうとっかかりからコミュニケーションを始めるというのは会話の基本である。要するにPCの設定というのはそれ自体がPCが関心を持っていることであり、関心を持っていることであればいろいろ話せるし、それに基づいて様々なリアクションをすることを発想しやすい。PCがいろいろ話して様々なリアクションをすることは、他のPCやNPCがそういったアクションに対してさらにリアクションするとっかかりにもなり、コミュニケーションが活性化する。加えて、話題の元になった設定がPCの行動原理の深い部分に影響を与える重大事であれば、より深い濃密なコミュニケーションが出来ることになる。

 ということで、他のPCやGMからアクセスしやすい設定があるPCというのはTRPGをする上では非常に良いPCだと思う。逆に、どんなに素晴らしい設定があろうとも他のPCやGMからアクセスする取っ掛かりのないPCというのは「クズ」であるw。

 まとめますが、TRPGに参加するPLはそんなようなことを考慮しつつキャラクターを作成すると良いと思います。

んでは
by namizusi | 2004-12-18 14:08 | TRPG


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