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ジレンマを主題にしたセッションの運営方法(1):(・_・)

http://analoggamestudies.seesaa.net/article/166819268.html
http://trpgnews.g.hatena.ne.jp/accelerator/20101212/p1

 参考記事はこの辺から。

 はからずも今年ぼちぼち書いていた、Myセッション運営手法をまとめた「ストーリー志向」のクライマックス編の内容とリンクすることになりました。ありがとうございますだ。

 TRPGにおけるジレンマとか英雄像についての実状とか、セッション中にうまく処理するためのテクニックとかについて説明します。

 解説のため

・SPACE BATTLE SHIPヤマト
 http://info.movies.yahoo.co.jp/detail/tymv/id335872/

の、ストーリ構造分析などしてますので(ネタばれ満載)、今後見たいと思ってる方は、自己責任でよろしく。

 あと、「ハートキャッチプリキュア!」「キック・アス」などの作品の内容にも触れているので要注意。



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1.コヴェントリージレンマ的なものは今時のエンタメ作品上で普遍的に存在し、別に特別なものでも何でもない

 コヴェントリージレンマでは

影響範囲:国レベル
重大さ:生死、あるいは文明/文化の消滅

という比較的大規模なジレンマを扱ってるのでなんだか大変そうに見えるが、もっとスケールを縮小して、払う代償なんかも身近なものに置き換えれば、ほとんど世の中に存在するありとあらゆるエンタメ作品の中に同様のジレンマとの対決というモチーフが入っている。

わかりやすい例)
・ダークナイト
・SPACE BATTLE SHIPヤマト
・ハムレット
・忠臣蔵
・バクマン
etc...

 特徴としては

・日本作品の方が、精神性を重視するという民族特性から、この手のジレンマを表立って描くのが大好きである
・「バクマン」みたいな展開が前のめりな作品(ダイハード3~コードギアス辺りがこの系譜に入る)では、展開が早いので、決断も早く、バリバリ分岐点が入ってくる。
・ハリウッドのエンタメ作品では「死」を代償にするのは、まだまだこれからという感じ

 例えば、先日放映された「ハートキャッチプリキュア」では「クリスマスイブの日に、プリキュアに会わせてあげる」という嘘をついた少女が、最後に

・結果的にプリキュアに会えたから良いじゃないかと考えて、嘘をついたことは黙っておく
・実は嘘をついていたと正直に言う

というジレンマに遭遇する。シビアに考えると

・嘘をついても結局上手く行くということに味をしめて、楽をして本当のことを言わなくなる。そのため、本音を話せる友人は一生出来ず、孤独な人生を送る
・本当のことを言って、友だちを失う(かもしれない)。

という二択を選択しているのであって、たまたまアニメの話は「本当のことを言う」選択をしたそのすぐ後に「友達だから!」と言って受け入れてもらうことで懸念は解消されるのだが、それはあくまで「たまたま」でしかない。

 例えば今放映中の「キック・アス」という映画の原作では、主人公が自分のことを「ゲイ」と嘘をついて、性的に危険が無いというのをアピールすることで、好きな女の子と親しくなるというエピソードがあって、最終的に

・恋人同士になる可能性を捨てて、一生嘘をつき続ける
・恋人同士になるわずかな可能性に賭けて、本当のことを言う

という二択に遭遇し、最終的に「本当のことを言う」選択肢を選ぶのだが、その結果は「大嘘つきの卑怯者!」と罵られて別離することになる。

 コヴェントリージレンマのような国家単位の大問題を扱ってるわけではないが、

・一個人の今後の人生を決めかねない重大決断をしている
・私的な話なので、とても身近にその苦悩がわかる

ということで、とにかくその選択に苦悩しながらも、何か一つを選びとっているところに、共感を覚えたり感動をしたり、あるいは英雄的なものを感じたりするのだ。

 そんなようなことから、コヴェントリージレンマ的なものは今時のエンタメ作品上で普遍的に存在すると考えるわけである。それは何か特別崇高なものでも何でもなくて、どこにでも存在する。そしてキャラクターがそこで決断し、先へと歩み出す姿に感動を覚えるのである。

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2.視聴者は、アクションの派手さに目を奪われて、実はそういう葛藤があるということに気付いていないことが多い

問題:スターウォーズ(エピソード4)で、主人公が人生最大の決断をする物語上の転換点はどこですか? その場面がどのように描かれていたか、覚えていますか?

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3.転換点の必要性
 キャラクターがジレンマに対して決断するシークエンスは、下記効果を得るため、必要である。

・キャラクターに感情移入する
・キャラクターを好きになる
・転換点に気付いていないことも多いが、潜在意識として植え付けられていて、そこんところのシークエンスがきちんと処理されていないと、見ていて違和感を覚える
・隠し味的に機能する
・ベタなお約束作品こそ、この転換点をきっちりプレイする。「男はつらいよ」の寅さんは毎回葛藤する。(いい加減成長しろよとw)

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4.ジレンマをTRPGに適用する問題

1)エンタメなストーリーには普通にジレンマが入っている
2)しかし視聴者は表のアクションに気を取られて葛藤が存在することに気付いていない
3)TRPGでエンタメなストーリーをプレイしようとするとキャラクターの内面をトレースすることになるので、否応なくそこにジレンマがあることに気付かされる
4)PLが、そのジレンマをうまく処理できないと話的につまらなくなる

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5.ジレンマの当事者性の問題
(SPACE BATTLE SHIPヤマトより引用)
古代:「あんたは――! あんたは兄貴を盾にして、防衛艦隊を全滅させて――。それで自分だけのうのうと生きているのか! 恥ずかしくないのか!」
沖田:「恥ずかしい? なぜだ」
森雪:「古代さん、沖田艦長を侮辱することは許しません。民間人になったあなたに何がわかるんです。あなたはあの戦いにいなかったからそんなことが言えるんです」

 ジレンマに対するヒステリックな反応は、

「後からなら、
 いくらでも何とでも言える」

的、当事者性の欠落した無責任なものになりがちである。

 で、この手のジレンマがあるセッションの見学をさせてもらったことがあるんですけど、外から見てると冷静に周辺状況がわかるんで、無責任にこうしたらいいんじゃない? というアイデアが広く発想できて、つい口出ししたくなる。しかし、そこでのプレイに対して責任のない奴が発言するのはよろしくない。

 将棋でも端から見ていると、良い手筋が見えやすいんですが、将棋というゲームは

「当事者であるプレイヤーが限られた時間リソースとプレッシャーの中でどういう手筋を読んでプレイするか?」

という部分もゲームの内なので(そこはアクションゲーム的である)、横から口を出すというのは余分なリソースを追加することになってゲームとしての公平性が破壊される。というわけで、将棋では横から口出しするのは「マナー違反」ということになっている。

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6.課程が重要
 ジレンマの問題というのは、ジレンマ自体の過酷さに注目されがちだが

・どうしてそんなジレンマに、あえてはまりこもうと思ったのか?
・そんなジレンマにはまりこんでまで、あえて成し遂げようとしたのは何なのか?

といった、課程を理解することが重要。転換点だけ見ても、その心情を理解するのは不可能である。一言で説明できるくらいだったら、わざわざ物語作品として作られたりしない。

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7.TRPGでジレンマをプレイする効果的な手法

・同じようなジレンマに何度も何度も対峙させる
・選択の重さ、代償をだんだんエスカレートさせていく

……という手順を踏むことでPLにジレンマと対峙する心構えを形作っていくことができる。

→ジレンマと対峙する課程を計画的に作りだすことが出来る

「SPACE BATTLE SHIPヤマト」が非常にわかりやすい例となっているので下記に示す。

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1)沖田艦長が古代守を犠牲にして地球に生還する。それを古代進が「恥ずかしくないのか!」と問いつめる

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2)第1の選択:森雪救出
 大量の敵部隊が迫ってて、ワープで逃げようという時に森雪が一人ヤマトに帰還できなくなってしまう。古代進は一人森雪を助けに飛び出す(暴走)。沖田艦長の博打的対処によって、幸運にも救出成功。

立ち位置:比較的責任のない立ち位置(戦闘隊隊長)
代償:なし
リスク:ヤマトの乗組員全員の命
獲得物:森雪の命

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3)独房入り
 →自分の行動が軽率なものであったことを知らされたり、艦長がフォローしてくれたことを知らされたり。

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4)古代進が艦長代理に任命される
 →自分自身が責任を負う立場に昇格される。

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5)第2の選択:第3艦橋爆破
 ヤマトを救うため、古代進は苦渋の決断で第3艦橋爆破を命じる。

立ち位置:責任のある立ち位置(艦長代理)
代償:第3艦橋に残された仲間
リスク:ヤマトの乗組員全員の命
獲得物:ヤマトの乗組員全員の命

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6)第3の選択:放射能除去装置疑惑
 かすかな望みをつなぐため、古代進は嘘と知りながら、イスカンダル潜入を鼓舞する。

立ち位置:責任のある立ち位置(艦長代理)
代償:罪悪感(仲間に嘘をつく)
リスク:地球で待っている人々(を救う方法の入手可能性)
獲得物:地球で待っている人々(を救う方法の入手可能性)

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7)仲間たちが死んでいく
 →目的のために仲間が犠牲になっていくことを受け入れる(苦しみながらも)。

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8)第4の選択:別離
 真田たちが敵本拠爆破に向かうのを許す

立ち位置:責任のある立ち位置(艦長代理)
代償:兄のような存在
リスク:地球で待っている人々(流星爆弾の阻止)
獲得物:地球で待っている人々(流星爆弾の阻止)

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9)第5の選択:最後の選択
 デスラーの惑星破壊ミサイル撃破のため特攻をする。

立ち位置:責任のある立ち位置(艦長代理)
代償:自分自身の命とヤマト
リスク:目の前の地球と未来
獲得物:目の前の地球と未来
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……こんな感じに、責任・代償・リスク・得たいと思っているものを段階的に強化していくことで、キャラクターの成長や覚悟の強化を促す。

 TRPGの場合も全く同じように、最初は比較的責任感のない立場で軽い選択をするところから、徐々に諸要素をエスカレートさせていくことでPLの心構えなり、覚悟を作り出す。

 以前りゅうたまでプレイしたシナリオではこんな風にやりました。

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1)第1の試練
 病気(不治の病)の猫を拾うかどうか、選ぶ

2)第2の試練
 猫を探している組織に猫を売るか、敵対するか、選ぶ

3)第3の試練
 猫と心の友達になるかどうか、選ぶ

4)第4の試練
 猫の命を救うか(その代わり、ブレスを使って竜人が死ぬ。りゅうたま世界に大災害が起きる)
 竜人の命を救うか(猫は寿命で死ぬ)

 二つに一つ選べ。

 ちなみに、猫自身は自分が寿命で死ぬのは自然なことで、構わないと考えているが、竜人は猫のことが大好きで、猫の命が救えるならば、命を進んでもかまわないと思っている。「猫の命を救う」という選択肢を選ぶのであれば、竜人(≒GM)を説得して納得させること。
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8.モチベーション上昇のコントロール
 7.で書いた手順をグラフで図示するとこんな感じ。
ジレンマを主題にしたセッションの運営方法(1):(・_・)_b0056599_22571252.gif

 ポイントは

・序盤でちょっと厳しめの障害を入れてガツンとモチベーションを上げておく
・あとは、徐々に段階的に盛り上げる
・PLのモチベーションの高さと、課題の厳しさが乖離し過ぎないよう、注意する

という感じ。

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9.この手のセッションをプレイする際の心構え
 ジレンマを主題としたセッションをプレイする際の心構えを下記に示す。

1)PLたちにジレンマと対決する意思がなかったら、開始30分でセッション終了になっても構わない、と腹を括ってセッションに臨むこと。(念のため、空いた時間をつぶす手段(別のシナリオとか、その他軽いゲームとか)をあらかじめ準備しておくと良い)
 →なんていうんでしょう。人に覚悟させたいなら、自分も覚悟しな! という等価交換の法則w。

2)PLたちが付いてくる意思を示してくれたら、感謝の意を示すこと

3)手を抜かないこと
 →矛盾や手抜きはモチベーションを著しく減退させるので

4)最後まであきらめないこと
 →PLの創造性は「あきらめない」ことで拾える確率が上がる。煮詰まった時こそチャンスである。

5)「どちらを選んでもらっても構わない」
 →選択の公平性保持のため。PLがどの選択肢を選んでも対処できるように

・「分岐を煮詰めておく」
・「シナリオをコントロールするオブジェクトを局所化しておく」
・「ある程度箱庭を完成させる」

などの対処が必要(詳細はあとで説明する(予定))。



 長くなったので、今回はこれまで。
 次回以降は

・ジレンマに直面したときこそ、真の創造性が発揮される……第三の選択肢について
・ジレンマをテーマにしたセッションに、シーン制が与える悪影響と、対処法について
etc...

について解説していくことにする。
んじゃまた。
by namizusi | 2010-12-21 22:59 | TRPG


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