ジレンマを主題にしたセッションの運営方法(4):(・_・)

ストーリ志向ジレンマその4。
今日は、ハリウッド映画的クライマックスの構成解説と、
正義の味方系システムの構造欠陥と対策方法について。

参考記事)
・◎ [つれづれ]「ファンタジーの文法」
http://western.blog.shinobi.jp/Entry/216/
・門倉直人『ローズ・トゥ・ロード』
http://sfhyoron.seesaa.net/article/173296285.html




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1.クライマックスの構造(ハリウッド映画版)
 こんな感じになっております。

1)「真の目的」と対峙することを決断する
2)死闘を繰り広げる
3)奇跡が起こる(ツイスト)
4)結末

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2.「ジレンマとの対決」をどこに挿入するか?
 上記の、

1)に入れるパターン
3)に入れるパターン

の2パターンが存在します。

1)に入れるパターンを
 「ハリウッドパターン」
(ハッピーエンドなハリウッド映画で多い形式なので)

3)に入れるパターンを
 「ヤマトパターン」
(自己犠牲的な話が多いので)

と呼ぶことにします。

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3.ジレンマの分岐処理基本フォーマット
 こんな感じになります。

 PLが素晴らしい解決案を思い付く?
 ├Y.素晴らしい!→True end
 └N.ジレンマのどちらを選択?
  ├公的利益追求選択→Normal end1
  ├私的利益追求選択→Normal end2
  └選択しない
   └素晴らしい幸運に恵まれた?
    ├Y.Better end
    └N.Bad end

 こんなふうに段階的評価されることで、分岐のリアリティ(実感)が得られるようになる。

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4.正義の味方系クライマックス戦闘系システムの問題

 PLが素晴らしい解決案を思い付く?
 ├Y.×素晴らしすぎるとラスボス戦すらなくなってしまう危険があるので、
 │  ボーナスを付けてこの分岐は叩き潰す
 └N.ジレンマのどちらを選択?
  ├◎公的利益追求選択
  │ └ラスボス戦
  │  ├○勝利→Happy end
  │  └×敗北
  │    →「どうせ勝つんでしょ?」でこの分岐は叩き潰す
  ├×私的利益追求選択
  │ →「どうせ戦うんでしょ?」でこの分岐は叩き潰す
  └×選択しない
    →この分岐もデウス・エクス・マキナで叩き潰す
     →Bad end

……こんな感じに結局一択に分岐を落とし込む。

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5.物語/ゲームの硬直問題
>◎ [つれづれ]「ファンタジーの文法」
>「解釈」の不在、という構造主義(一方で、アメリカ構造主義という別個の体系があり、生成文法もまた、批判にさらされています。)の提示する命題そのものです。もうひとつ、分かりやすく述べると、物語の(意味ではなくハイデッガー的な)意義が欠落
(中略)
>TRPGとして、この手法を取るならば、GM、PLそして、ゲームデザイナー、シナリオライターのそもそもの読者性と作家性を無力化・無効化させます。 TRPGとして「物語上のブタ」と「参加者の不在」を発生させます。TRPGとしての遊びの崩壊を生み出し、遊ぶ余地のないものとなります。

 わりと極論だと思いますが「4.正義の味方系クライマックス戦闘系システムの問題」で言うと


・「どうせ戦うんでしょ?」
 →選択の硬直
・「どうせ勝つんでしょ?」
 →結果の硬直



という二つの硬直によって意義の欠如、物語的面白さの欠如、作家性の無効化がもたらされる。
いわゆる『マンネリズム』というやつですが、別に必ずしも悪いわけじゃないけれども、いい加減そればっかりやってると飽きるというか、選択の意義が摩耗するというか。基本的に

・キャラクターは常に真剣に決断しているが
・視聴者は「どうせ、やっぱり戦うんだろう?」

と思っていて、非インタラクティブ・メディアで観てるだけならそれはそれでギャグとして観れなくもないけれども、TRPGでは両者が交感して、視聴者的倦怠感がキャラクターに流れ込んでしまって、余計に形骸化が加速されるという問題がある。

対策として

『たまにはパターンを変える』

ということで、アニメだと真ん中でヒーローが敗北して、新コスチュームに切り替わるとかして、選択のリアリティをリセットするのだが、正義の味方系TRPGだと例外的プレイが許されにくいという状況があって難しい。

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6.対策方法
 「5.物語/ゲームの硬直問題」の対策方法は下記の3つがあります。

対策1)分岐を正しく機能するように修正する
 ・PLが素晴らしいアイデアを出せばそれを拾うし、
 ・別に戦わなくても良いし
 ・サボタージュ作戦をした場合も一応判定はしてもらうようにする

 ただ、これにはいまどきのスタンダードなTRPGシステムの問題があって

・戦わない
 →あっさり終わって物足りない
・戦う
 →戦闘システムを余すことなく使いきって充実した時間を

という具合にPLレベルで著しい不公正があるのに引きずられて、

「どうせ戦うんでしょ?」

に流されやすくなるという問題があります。対策としては


・「あきらめる」のも戦いである。それは精神的戦いである


と、評価して普通の戦闘と同程度の重みのある課題として処理する。

・普通の戦闘→物理的戦闘
・戦闘をあきらめる→精神的戦闘

というような位置付けで。
SNS系ならあきらめるのにFS判定をするとか、深淵なら精神抵抗10連発とかやればガリガリ寿命が削れて良い感じですな。

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対策2)クライマックス戦闘を本気でガチにする

「どうせ戦うんでしょ?」



「戦えば少なくない確率で死の可能性がある。
 それでも戦うことを選んだのだ」


に変化し、戦いを選ぶことに決意/リアリティ/意義が発生する。

……実情は、ガチ戦闘系システムってまだまだマイナーなんですけど。永遠にマイナーかもしれんがw。まあ、PCは別に正義の味方でも何もない系システムも一応ここに入りますかね。

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対策3)「彼/彼女は、なぜ戦うのか?」をつまびらかに描写する
 「正義の味方がラスボスを倒す系」が志向するのは基本的にこれになりますが、問題があります。

 彼/彼女(PC)の

・人となり
・戦うことを決意する過程

を、きっちり描写し視聴者を納得させ

・戦いを選ぶことにリアリティがある
・戦いに勝つことにリアリティがある

と実感させられれば、それはそれで有意味な面白いエンタメストーリーとして成立する。

・PLが自分のPCを
 魅力的で
 一貫性があり
 戦いの決意をするのに視聴者の納得が得られる
 ように認識させられるかどうかというPLの演出力の戦い

というような闘争/ゲーム。
ここで問題となるのは

・PCの人となり理解
 →PLがPCの人となりを参加者全員にアピールするのに十分な機会が与えられているか?

・PCの決意の理解
 →PCが戦いへの決意をする過程を演出する機会が十分与えられているか?

というところで、これさえ出来れば別にセッション中何をやってても良いんだけど

<1>PC演出を阻害するルール/演出等
・マスターシーン
 PLに「このNPCは悪い奴だ。倒さないと!」と思わせる説明としては使えるが
 ・PCの人となりの理解
 ・PCの決意の理解
 にはまったく何も寄与しない。
 (PCがそれを見て「奴は許せん!」とか、登場してないのに出来るわけもない)

・情報収集
 間接的には役立つけど、あくまで間接的であってそれより直接やった方がいいのではというところがある。

「PCの人となりを理解させ、PCの動機付けを納得させよう」

 という主旨のセッションに使う演出としてはかなり非効率である。
 ただまあ、上手く処理してるシステムもあって、サタスペの情報収集ルールはかなり行けてるんですが、あれって

・ストーリー理解のためにPL/PCに与える情報はせいぜい1~3個
・情報収集の過程でドタバタハプニングが起きてPCの演出が出来るのが、特に重要

という。以前情報収集で、情報を得られるか、どんな情報が得られるかよりも、情報を得る過程のディテールの描写が重要なんじゃないかという話がされているのを見たことがありますが、まさにコレが実現できているシステム。素晴らしい。

……というようなシステム的にバッティングする問題がある。一方で

<2>PC演出を促進するルール/演出等
・クライマックス直前のモチベーションの再確認
 これについては何度も言ってますが、やった方が良いですよ。

・課題との対決(ザコ戦闘等)
 ある程度追いつめられた方がいろいろ出てくるものがある。

・日常的シーン
 日常そのものをやるのも良いですが、何したら良いかとっさに思い付かない人もいるので「日常的イベント/課題」をプレイするのも良いと思います。買い物をするとか、パーティーの準備をするとか、スポーツ的な競技をするとか、恋愛プレイをするとか、どっかに一緒に出かけるとか、ミニゲームをするとか、お祭りとか。

・グダグダ議論する
 PC/PL同士で思想のぶつけ合いをすることで、人となりや動機付けが明らかになったり、決意が固まったりします。

・PvP
 PvPは

「情報収集する」→「他PCの人となりや動機付けを明らかにする」
「対決する」→「他PCの人となりや動機付けを明らかにする」

となって、自動的に「PCの人となりの理解」「PCの決意の理解」が互助的に促進されます。

・回想シーン

・独白

・夢



クライマックスのジレンマ処理における「ヤマトパターン」の解説は次回に。
んじゃま。
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by namizusi | 2011-01-07 02:54 | TRPG


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