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ジレンマを主題にしたセッションの運営方法(6):(・_・)

ストーリ志向ジレンマその6。
ヤマトスタイルの解説をします。



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1.ヤマトスタイルの構成
 クライマックスのひねり(ツイスト)部分にジレンマを導入する方式です。

・クライマックスの構成
 1)「真の目的」と対峙することを決断する
 2)死闘を繰り広げる
 3)奇跡が起こる(ツイスト)←ここにジレンマを入れる
 4)結末

・分岐の処理
PLが素晴らしい解決案を思い付く?
 ├Y.素晴らしい!→True end
 └N.ジレンマのどちらを選択?
  ├公的利益追求選択→Normal end1
  ├私的利益追求選択→Normal end2
  └選択しない
   └素晴らしい幸運に恵まれた?
    ├Y.Better end
    └N.Bad end

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2.ヤマトスタイルの特徴
 プレゼンの意味も込めて、特徴の解説をします。

2-1.PLがどの選択肢を選ぶかは完全に自由である
 TRPGが自由な遊びであるかについては、実際にはシステム/シナリオ/メンツの制約があって自由ではない(現状のデジタルなゲームと比べれば比較的柔軟性はあるが)というのはすでにわかっております(わかってるよね?)。

ビヨンド・ローズ・トゥ・ロードでわかる実践RPG入門

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・p.160~p.161
>シリア ……なるほどねー。つまりこれはシナリオのストーリーで決まってるんだ。わたしらは山賊に捕まるようにって。
>ボウ ぶぅぶぅ――っ! シナリオに自由度がないぞおぅ!
(中略)
>GM (中略)私はプレイヤーの意思に反して行動を強制するようなマスタリングはキライなんだ。やはりプレイヤーは自分の考えで動いてなくちゃ、テーブルトークRPGの意味がないからねぇ。
>モノ ほんとにそう思ってる?
>GM ホントだとも。

> おもいっきりウソである

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・p.218~p.219
>例 村に立ち寄らないPC
>(中略)
>ま、かくしてアドリブで山賊の登場とあいなったわけだけどね。でも実際、プレイヤーにとっては素直に村に入っていた方が楽だったと思うんだけどなあ(笑)。

 という感じに大昔から言及されていて、最近では「プレイヤーにとっては素直に村に入っていた方が楽だったと思うんだけどなあ(笑)」というGMの思惑が優先されさえしておりますが、いや、個人的には効率悪くて回り道をしてでも、

・自由に行動したい

というのが、自然な、人情だと思いますが。

 それはさておき、TRPGでは何もかもが自由に遊べるわけじゃないけれども、部分的に自由に遊べる局面というのを作りだして、そこの自由さ快適さで自由な感じを享受します。そのための手法がいくつかあります。

1)箱庭方式
 PCの行動範囲を区切って、その範囲内であれば好きに行動して良い。

例1)ダンジョン探索もの(多すぎるので割愛)
例2)街限定もの(「ミストキャッスル」)

2)テンプレート方式
 PCの活動する話の構成の雛型を提示する。その構成さえ守ってくれれば他のディテールは好きに変えて構わない。

例1)ダンジョン探索もの(多すぎるので割愛)
例2)勧善懲悪もの(いわゆるPCが正義の味方で、悪がシステムで規定されていて~というもの)
例3)事件捜査もの(「霊障都市捜査ファイル」)

3)葛藤を主題にした方式(ヤマトスタイル)
 結末は、完全に自由に選べる。

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2-2.完全実力主義
 自由には責任が伴うものです。ヤマトスタイルでは自由を得る代わりに、PLが問題解決に貢献できたかどうかが、完全実力主義的に評価されます。具体的に責任って何? と言うと

・成功を段階的に評価する

とかいう話が昔ありました。これってどういうことかと言いますと、要するに


・力のないPLはハッピーエンドを得る資格はありません


と、きっぱり割り切るということです。


今日のセッションで
最後に上手く行かずバッドエンドになりました。
それは、そのセッションに参加したあなたが、
そこで上手く問題解決できなかったからです。
バッドエンドになった責任は、
あなた自身にあります。



という具合にPLに責任を取っていただく。

逆に言うと、

あなたが何らかの素晴らしいプレイをすることが出来たら、
そのときこそジレンマを打破して大団円を勝ち取ることが出来る


そういう完全実力評価主義的運用となります。

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補足1)奇跡を起こす方法
 じゃあ、ジレンマを打破する奇跡をPLが起こせるかどうかについては、方法がいくつかあります。

1)ジレンマを打破する素晴らしいアイデアを思い付く
2)素晴らしい奇跡的なダイス目を出し続ける
3)ルールシステムの素晴らしい運用法を発見し、実行する

 これらのどれかをあなたがその日のセッション中にプレイすることが出来たら、大団円を獲得することが出来ますが、そうでなかったら獲得できません。

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補足2)段階的評価
 世の中の人間は、いざという時に奇跡を起こせる人ばかりではありません。また、同じ人でも、うまく行かせられる時とそうでない時があります。
 そういう人でも、何らかの代償を払えば、それなりの妥当なエンドを得ることが出来ます。

 根本的な大きな間違いを犯してしまった時や、ダイス目などで極端に不運に見舞われた時は、バッドエンドにならざるを得ない。

PLが素晴らしい解決案を思い付く?
 ├Y.素晴らしい!→True end
 └N.ジレンマのどちらを選択?
  ├公的利益追求選択→Normal end1
  ├私的利益追求選択→Normal end2
  └選択しない
   └素晴らしい幸運に恵まれた?
    ├Y.Better end
    └N.Bad end

……というのがこの分岐処理になります。完璧な大団円を得たければ何らかの「跳躍」が必要になりますが、何かを代償にした妥協によるエンドであれば、そんな素晴らしい能力がなくても得ることは可能にしています。

 PLがへなちょこでも、ソコソコのエンドは得られるということよ。

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2-3.戦闘をしなくても盛り上がる
 ……まあ、僕の環境ではいつも盛り上がるんですけど(笑)。例えば「PC1が三角関係になっていて、たった今、この場所で2人に1人、結婚相手を決めて宣言しなくてはならない」とかいう状況があればそれだけで盛り上がると思います。

 どういうネタで盛り上がるかはメンツによると思いますが、互いに譲れない価値観に関する決断をする局面なら、グダグダ盛り上がることが出来ます。

 この辺の方法論も整理して定式化したいんですが。基本的にボケとツッコミですかねえ。

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2-4.分岐後の処理は投げっぱなしで良い
 分岐があると、そのあとどう対応するか、考えるのは大変なことですが、クライマックスのツイストで分岐したら、そのあとはエンディングの描写だけですので、基本的にPLに考えば良いのでGMの負担は楽になります。

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3.勧善懲悪ラスボス戦闘型スタイルにヤマトスタイルを導入する方法
 勧善懲悪ラスボス戦闘型の場合は、ハリウッドスタイルのジレンマ設定で、

・どうせ戦うんでしょ?
・どうせ勝つんでしょ?

という硬直が発生することを前回述べましたが、ここで

・サブミッション

を導入することで、ラスボスと戦って、どうせ勝つんでしょ的倦怠感に「ジレンマ」を導入し、ヤマトスタイル的構成に変えることが出来ます。
例えば

・サブミッション:ヒロインを助ける

というのを設けて、結局ラスボスには勝つんだけど

・ラスボスには勝ったがヒロインが死んでしまった
・ラスボスに勝ち、ヒロインを助けることも出来たが、仲間に犠牲が出た

というジレンマを発生させることが出来ます。

 ただ、こういうジレンマはPL側から無効化の圧力がかかって来ますので、ジレンマをジレンマとして成立させるために、ある程度堅牢な仕掛けを考える必要がありますが、これを現状システムでほぼ自動的に上手く実現してるのが

ハンターズムーン2 スローターサイクル

で、このシステムでは

・PCがそもそもラスボスに勝てるかどうかが、そもそもカツカツで厳しい

という状況で、その上に

・ハンターキラー化したヒロインを助けるかどうか

というサブミッションを持ってくると

・敵を何とか倒す。ヒロインを助ける。その代わり仲間が死ぬ
・敵を何とか倒す。ヒロインを見捨てる。PCたちは全員生き残る

というくらいのジレンマに自動的になります。
で、このジレンマを打破したいなら


・戦闘で、奇跡的に素晴らしいダイス目を出しなさい
・戦闘で、奇跡的に素晴らしいコンビネーションを実現しなさい


という奇跡の実現をPLに要求することになり、それが出来ないなら、何らかの代償を払うしかない、というヤマトスタイルのジレンマが完璧に成立するようになります。

 方法は他にも色々ありますが、最適解の一つということで、参考までに。

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3-1.FSの問題
 ただ、上記ジレンマを実現するには

・戦闘が終了するまでのターン数
・サブミッションをクリアするためのターン数

が、ある程度同期している必要があります。

ヒロインを助けるのに20ターンかかって、
戦闘が3ターンで終わります

では、問題を並行して扱うのが難しくなる。
あるいは1ターンの時間単位が違ってると、これも同期困難になります。

そこんところの調整が要るかもしれません。

#深淵だと、戦闘行為も、その他作業も全部同列処理なので、気にする必要がないんですけど。

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4.まとめ
 ヤマトスタイルのまとめですが

・ジレンマの選択を完全に自由にすることが目的
・完全実力主義。クライマックスのひねり/奇跡/ツイスト/ブレークスルーは、PLの実力で実現する
・ラスボス戦闘系でも「サブミッション」を導入することでヤマトスタイル的ジレンマを発生させることが出来る

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5.実績および宿題
 こういう実力主義的丸投げな方式で実際のプレイでどれくらいうまく行ったかと言うと、体感としては6割くらいかなあと。世の中のPLには、凄い、実プレイ中に奇跡を起こせる人がたくさんいますので、だいじょうぶ、信頼しろと言いたいところですが、あなたの環境でどうだかは保証の限りではありません。

 で、問題を解決するにはとにかく「考えること」を鍛えるしかありませんが、そもそも考える機会が少ないため鍛えようがないという話もあるので、練習用に宿題を出します。考えてみてください。

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問題1:少女の願い
 「白い悪魔」と呼ばれる白馬にさらわれた少女を、助ける依頼を受けた。実は、少女は白馬と友人で、さらわれたのでも何でもなかった。しかも白馬は仲間が人間(少女の父親)に捕らえられ、それを救出しようとしている。

選択肢1)少女を連れ帰り、白馬のことは忘れさせる
選択肢2)少女と白馬の味方をし、いっしょに人間の馬牧場を襲って白馬の仲間を助ける

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問題2:神様の問題
 世界を守っている神様が、神様という位置にあることに飽いて、自由になりたいという願望を抱いたところ、その願望が巨大な魔物となって世界中を災厄が襲った。魔物は何とか退散させたが、神様を滅ぼすわけにはいかないので問題の根本は解決されない。そうすると、また同じ問題が発生する可能性があることが分かった。

選択肢1)神様には我慢してもらう。問題が起きたらそのときにまた対処する
選択肢2)神様にはもう神様をやめて自由になってもらう。世界が滅ぶけど(笑

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問題3:最後の願い
 「3つの願い」というシナリオの最後の願いはジレンマになってます。

選択肢1)人間に戻ることはあきらめて、じいさんと楽しく過ごす人生を選ぶ
選択肢2)人間に戻り、じいさんは見捨てる。最後の願いを叶えることはあきらめる

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問題4:嘘の母親
 「サマータイム」というシナリオでやったやつ。PCは孤児で、NPC母親がPCのことを自分の子供と勘違いする。PC自身もNPC母親のことを「お母さん」と慕うようになったところでNPC母親は魔女裁判にかけられる。PCは証言台に立たされる。

選択肢1)NPC母親を魔女と告発し、自分はその子供でも何でもないと証言する
選択肢2)自分はNPC母親の子供だと言い、いっしょに処刑される



一応、僕のところでは全部見事に打破された問題です(素晴らしい!)ので、これを読んだみなさんも、これらのジレンマを打破する素晴らしいアイデアを思い付くと信じております。

次回は

「ジレンマを打破する素晴らしい解決方法は、いかにして発想されるか」

について解説します。
んじゃま。
by namizusi | 2011-01-23 20:51 | TRPG


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