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面白い情報収集の考え方:(・_・)

 面白い情報収集の考え方について整理します。

 半年ぐらい前にこれに基づいたフレームワークを考えて、どっかで実地に試そう! とか画策してたのですが、最近はあまりTRPGをやってる暇もないので、ノウハウの開示をしておこうかなあと。

 個人的には、半年もの時間があったら、いくらでも、面白い情報収集の数々が、汎用的ノウハウと共に開陳されて「今TRPGで何が面白いって、情報収集がめっちゃ熱くてさあ!」というような世の中になるかなあと、ちょっと期待していたのですが、残念ながらそれは達成されませんでした。


 世の中のTRPGerって『へなちょこ』ばっかりだねえ


……という事実が、図らずも証明されてしまって、非常にガッカリしているのですが。

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 ……とか何とか偉そうに書いてたら、こちら、
『歌声が響く都市』流のシティアドベンチャの作り方
の方でやられていたらしい……良いですね!

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 まあ、それはさておき。

p.s. 「「シノビガミ」の情報収集はなぜ面白いのか?」など追記(2012.10.07)



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0.背景
 昨今のTRPGの情報収集系システムは、長年のノウハウの蓄積によって随分分かりやすくなりました。それは良いのですが、重大な問題があり、それはいまだに解消されてません。
 どういう問題かと言いますと

・情報収集という行為自体が、ちっとも面白くない

という問題です。
 以前の記事で、昔は情報収集がわかりにくかったので、逆説的に情報収集が面白いという現象があった、という話を書きました。──セッションが停滞するというリスクはありましたけど。
 昨今のTRPGシステムでは「セッションが停滞するというリスク」を回避することに主眼が置かれ、わかりやすくなり、サクサクセッションが進むようになった。それは良いけれども、それと合わせて情報収集にまとわりついていた「面白さ」まで殺ぎ落としてしまった。そういう問題があります。

 ぶっちゃけ、今どきのシステムであれば、情報収集なんてすっ飛ばして、さっさとクライマックスに突入してくれればいいんですよ。


 それ以外は、全部時間の無駄だから(PLから見れば)。


 ……というような現状があるわけですが、いやいや、そんなことはない、昔は情報収集って楽しかったし、今どきの整理されたシステムでも情報収集を面白くする方法は何かあるはずだ。という問題意識に基づいて、あれこれ考察したのが以下の論となります。

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1.情報収集の面白さは何か?
 ……というわけで、情報収集の面白さについて考察してみることにします。
 情報収集の面白さには以下の2つがあると考えます。

1)情報自体が面白い
 →情報と情報が寄り集まって繋がっていく様が気持ちいい、という面白さも含む

2)情報収集によるサプライズ(驚き)が面白い

 サプライズに対しては、最近某所で「びっくり箱なだけ」とか揶揄されてたことがあって腹立たしいのですが(笑)、「情報収集の面白さ」という観点から言えば、

・「びっくり箱」的で、驚きがあるだけで、驚きも何もない定番展開だけのセッションの∞倍面白い

と言えます(まあ、定番展開のセッションは情報収集以外の面白さを追求すれば良いのです)。

 ちなみに「クトゥルフ神話TRPG」の基本ルールブック掲載の最初のシナリオは、「お化け屋敷シナリオ」といわれておりまして、要するに典型的な「びっくり箱シナリオ」なのです。
 つまり、

・クトゥルフ神話TRPGの定番的楽しみ方の一つは「びっくり箱」セッションである! とデザイナー自信も宣言しているのだ

 というわけで、「びっくり箱」を考えなしに否定するのは、それは間違っているよ、とそこは釘を刺しておきたいと考えます。

 うむ。

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2.情報収集の面白さを追求するにあたって重要な2つの質問
 上で、情報収集の面白さって何、の回答を2つ書きましたが、まだそれでは何がなんだかよくわからないと思われますので、考察を掘り下げるために「情報収集の面白さを追求するにあたって重要な2つの質問」というものを提示します。
 まあ、考えてみてください。

質問1:「面白い情報とは何ですか?」
質問2:「『サプライズ』は、なぜ発生するのでしょうか?」




































































































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 よく考えましたでしょうか?

 では、以下にワシが考えた回答を記述していくことにします。

3.「面白い情報とは何か?」
 面白い情報とは何かと言いますと、それは

「物語」

であると、ワシは考えます。「物語」というのは、本論では、複数の連なった情報のまとまりのことを指します。

 まず、単体の情報だけでは面白くも何ともないのですよ。例えば

・身長:57メートル

という情報があったとしましょう。これだけでは、それが大きいのか、小さいのか、いったい何の身長の話なのか、基準も関連も何もないので面白さを感じることはできません。しかし、

・それは、とあるロボットの身長である
・身長:57メートルというのは、1階のフロアの高さを2メートルとすると、30階建てビルくらいの高さになる。それはサンシャインビル(60階建て)の高さの半分弱くらいになると想像される
・重量は550トンであるとしよう。1辺1メートルの立方体が1トンの重さなのでこれを2×5個ずつ配置して55段積み上げれば、550トンになるけど、それって軽すぎないか?

……というような付帯情報(物語)が連なってくると、情報はより実感を伴うものになって、面白味が増します。

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4.面白い情報では、『サプライズ』が、なぜ発生するのか?
 上記で面白い情報とは「物語」であると書きました。「物語」であるということは、そこには

・期待される展開

が発生します。例えば

・ヒロインは小学生の女の子

という情報を提示したとしましょう。すると、そこから派生して

・身長は結構低いであろう
・髪型は(大人にはない)子供っぽい髪型かもしれない
・学校に通うときにはランドセルを背負ってるかもしれない
etc...

……といった、期待された展開が想像されます。そこに、上の方で書いた情報、

・身長:57メートル

を付け加えてみましょう。

・ヒロインは小学生の女の子で、身長は57メートルだ


 面白いと思いませんか?


 ワシは面白いと感じます。こういう、期待する展開とかけ離れた要素を物語に追加することで出す面白さのことを

「ギャップによる面白さ」

と言います(ギャグの定番パターンの一つです)。そして、この「ギャップによる面白さ」こそが「サプライズによる面白さ」そのものなのです。

 というわけで

・面白い情報とは「物語」である
・「物語」は「ギャップによる面白さ」=「サプライズによる面白さ」を導入することで、より面白くすることができる
・なので、面白い情報では、情報をより面白くするために、しばしば『サプライズ』が使用されるのである

となるわけです。

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5.TRPGシナリオで「面白い情報」を作るための手順
 ……というわけで、上記理論に基づいてTRPGシナリオで「面白い情報」を作ってプレイする手順は下記のようになります。

1)今回のシナリオの何か(登場人物・事物)にまつわる「物語」を考える
2)入れたければここに適宜「サプライズ」を振りかける
3)「物語」を分解する
4)分解した断片情報を、シナリオの各所に分散配置する
5)情報収集によって「物語」が再構成され、面白味が感じられる

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6.「物語」の分割方法
 上記で

・「物語」を分解する」

と書きましたが、どうやって物語を分解すれば良いのか、わからない人もいると思いますので、定番の分解方法を以下に示します。

1)物語の進行状況による分割
 「日記」「新聞記事」などの情報は、基本的に時系列順に記述されます。この情報を分割して伝えれば良い。
 「新聞記事」だったら、その日にならなければ次の記事は読めませんから、セッションの進行状況に応じて時事刻々と展開する情報をバラして伝えることができます。
 また「日記」の場合は、日記の本やページが破りとられてページ/本の断片を集めて再構成する……なんてのが、ミステリ系の話でよくあります。

1ー0)起・結
 2部構成。物語の最小単位。物語というのは、最初の状態から、結果、どういう変化をしたか? を表現するものです。何も変化しなかったらそれは物語ではありません。(「時間の経過」自体も変化ですけど)
 お題を出して、その結果どうなったか(変化)、という構成で「笑点」なんかでも良くやりますね。「サプライズ」の表現に特化した形式でもあります。

1ー1)序・破・急
 物語を3部構成で分割する定番の方式です。ひねりはないけど、アクティブにグイグイ進んでいく物語形式で用いられます。

1ー2)起・承・転・結
 物語を4部構成で分割する定番の方式です。「転」で、物語上の「ひねり」の概念が導入されます。「サプライズ」の基本。

1ー3)ハリウッド映画的8シークエンスによる分割
 起承転結を発展させた形式です。8シークエンスを起承転結と同じ用語で記述すると
 1)導入
 2)起
 3)承1
 4)承2
 5)承3
 6)転
 7)結
 8)後日譚
 ……というような構成になります。

2)物語の構成要素による分割
 「物語」を、時系列ではなく、構成する要素によって分割する方式です。「5W1H」なんかで分解する方式がそれです。あるいは「三題噺」なんかも似たアプローチです。
 5W1Hは、ネットで調べればすぐわかると思いますが

・When(いつ)
・Where(どこで)
・Who(だれが)
・What(何を)
・Why(どのような理由で)
・How(どのようにして)

……という観点で「物語」を分割する考え方です。で、これらの情報をどのように提示していくかで、心理的効果が変わります。例えば、サスペンスフルな展開を演出しようとするのであれば、

・「Who(だれが)」「When(いつ)」「Where(どこで)」
 →事件の解決に直結しやすい。
 →終盤に出すと良い。

・「Why(どのような理由で)」
 →序盤で出しても構わない。
 →PLが「物語」に感情移入するかどうかの重要要素となる。

……というような感じに、それぞれの情報に重み付けができたりするので、その傾向をうまく使うと良いでしょう。

 ──上記の物語分割方式は、どれか一つ選んで使っても良いし(単純なシナリオや、物語が長い場合に有効)、複数の分割方式を並列で使っても良いと思います(「物語」の多面性が引き出されて深みが出る)。

 あるいは、一個の「物語」を扱うだけではなくて、複数の「物語」を様々な分割方式で分解して混ぜ合わせてもいい。(やりすぎるとPLが把握できなくなるので、PLの傾向やセッション時間を考慮して程々に)

 複数の「物語」がバラバラに配置されていても面白くないので、「物語」と「物語」が特定の要素で絡み合ってるのも良いでしょう。(単体だけでは面白くないのです)


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7.「面白い情報収集」のフレームワーク化
 ……というわけで、面白い情報──物語を、構成する細かい個々の情報は、定式的に分割提示することができますので、この辺を全部ランダマイザでやれるようにしても良いかなと。

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8.「面白い情報収集」のための「物語」の特徴
 下記のような特徴があります。

・時系列順でないことが多い?
 「新聞」「日記」等で、強制的に時系列を整えない限りは、「物語」の順序が時系列順とならないことが多いです。

・PLが知る順序が状況によって変化する
 加えて、「PCがどこから調べる?」によって無作為にプレイしながら順序が変わることがある。
 ミステリでは、「情報をどのような順序で明らかにしていくと最も劇的に見えるか?」に、すごい配慮がされてるんですけど、TRPGセッションではシナリオ作成時にうまく期待したように、情報を見せられないことがあります。あるいは、ランダムによって却って面白い効果が出ることもあります(ほのぼの話だと思ってたのが、情報の出る順序で、すごいサスペンスに変わってしまったり)。

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9.非時系列的「面白い物語」の参考例
 ミステリ系の、情報が繋がって気持ちいい! という類いの作品が参考になります。
 また、インパクトを狙った、時系列順でない、テクニカルな構成の物語作品なんかも参考となります。

1)重要情報を後ろに回す
 「パルプフィクション」なんか良いんじゃないでしょうか。前半~中盤は個性的なキャラクターの奇抜なシーンが散りばめられて興味を引き、終盤に、それらを繋ぐキーシーンが怒濤のように挿入されて、おおお! っと繋がってくのが気持ち良い。

2)時系列を逆転する
 「メメント」
 結末から、発端まで時系列を真反対にさかのぼる形式。一見奇抜な作品ですが、実は、主人公は、時系列順にミッションクリアしてくけど、得られる情報は時系列を逆に遡っていって……という展開はミステリ系でありがちだったりしますのでとても参考になる。
 この形式の特徴は、要するに

「動機は何か?(why)」

をメインの謎に持ってくる場合に向いています。

3)多分岐の物語
 「ラン・ローラ・ラン」
 多分岐の物語ってタイムスリップとか入れないとなかなかないですが、「群像物語」……出発点は一つだけど、そこから別れていった人々の物語、なんかを追体験していく場合に使えたりしますかね。
 あと、「このフラグで展開が割れる(キー場面)」の抽出の参考にもなるかと。

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10.「面白い情報収集」のあるTRPGセッションとは?
 ……要するに

・時系列順のPCの物語
・情報収集によって再構成される非時系列順的物語

の、2つ(以上)が平行で進行するのを体感していく遊びと思うわけです。

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11.「シノビガミ」の情報収集はなぜ面白いのか?
 最近のシステムで唯一例外的に情報収集が面白くなっているシステムとして「シノビガミ」があります。この面白さも本理論によって簡単に説明することができます。

1-1)「使命/秘密」は2部構成の「物語」である
 シノビガミではPCの目的として「使命/秘密」というものを与えられ、他人には非公開の「秘密」を探りあう情報収集があります。まず、これ自体が「物語」になっています。

<1>「使命」:表向きこのPCはこういうキャラでこういう任務に就いているっぽい
 ↓
予想:表向きの使命はそうだが、相手は忍者だから、実はこういう裏の目的を持ってるんじゃねえ?
 ↓
<2>「秘密」:実は秘密なんて何もありませんでしたー! とか(例)

こんな感じに、表向きの「使命」によって「期待される展開」が誘発され、「秘密」によってサプライズが生まれるという2部構成の「物語」が、システムで最初から形成されているわけです。

1-2)「使命/秘密」同士がつながりあって大きな「物語」になるかもしれない
 ここはシナリオ作成者の工夫のしどころなのですが、「秘密」同士が裏で情報がつながっていて、全体として一個の「物語」になっている、という情報の構成を作ることもできるようになっています。
 ここの「物語」をうまく構成するのはシナリオ作成者の技量しだいではありますが、サンプルシナリオや、リプレイのシナリオなんかは、うまくやってるので参考にされるとよろしいかと思います。

 ……という具合に「シノビガミ」では「情報」を上記2つの「物語」によって有機的に関連付けさせることで情報収集を面白くすることに成功しているわけです。



 ま、そんな感じで。
by namizusi | 2012-10-05 02:14 | TRPG


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