2005年 01月 15日 ( 1 )

「マスタリングスタイル」の意義とパラダイムシフトとTRPGの定義

 4つのマスタリングスタイル更新。FEARゲーテクニックの項目以外にFEARゲーでNGとされるテクニックについての評価も増やしました。僕のプレイ経験に基づく主観で書いてるので、一部違うんじゃない?という項目はあるでしょう。
 で、「プレイスタイル」とか「スタイル」とかいろいろ言ってましたが、僕が言っている「スタイル」というのは、

・GMがどういう方針でセッションを運営しようとするか?

というスタイルの話なので、今後は「マスタリングスタイル」という名称で統一することにします。

 で、今回は「「マスタリングスタイル」の意義」についてと、それによって導き出される「TRPGの定義」及び、「TRPGというのは、ルールが途中で書き換えられるゲームである」ということを説明する「(TRPGにおける)パラダイムシフト」について解説します。

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1.「マスタリングスタイル」の意義
 4種類のセッションタイプに書いた4つのマスタリングスタイルの意義を説明する。

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1-1.「マスタリングスタイル」によってTRPGのルールが決定される
 端的に言うと、GMがどの「マスタリングスタイル」を選択するか?によって実際のセッションの運用が変化するのである。例えば

<サンプルシチュエーション>
 PCは目的を達成するのにとあるNPCを犠牲にしなくてはならない。だがPCはNPCに対して好意的な感情を抱いていたのでためらわれる。しかし悩んだ末、PCはNPCを葬ることを決意した

というシチュエーションの場合。

「ハウダニット」
 NPCに止めを刺すことが出来るか、システムルール的に公平に判定する。失敗する可能性が生まれ、失敗した場合にはまた別のドラマが生まれる。

「メタ・ハウダニット」
 PLがそう決意をしたということは、そういう展開が卓の共通認識として「予定調和である」と認定されたことになる。よって、システムルールを無視してNPCが死亡したことに「しても良い」。かっこいい死に様を演出しよう。

「ホヮイダニット」
 PLがそう決意をしたという時点で「ホヮイダニット」のゲームは終了している。ここで「失敗した」なんてことが起きるとそれまでやってきた葛藤のゲームが台無しになってしまう。よって、システムルールを無視してNPCが死亡したことに「しなくてはいけない」。

「ミステリ」
 状況による。

…というように、「マスタリングスタイル」によって、TRPGのシステムが提供するルール以前にセッションをどう運営すべきであるか?というルールが変わるのである。

 昔「馬場秀和のマスターリング講座」で、TRPGのゲームは「シナリオ」「システム」の2つの要素が揃ってはじめて完成するのだという論があって、“ああ、なるほど”と納得した覚えがあるのだが、今ならばその論には重要な抜けがあったことが指摘できる。つまり、TRPGのゲームというものは「シナリオ」「システム」の2つ以外に「マスタリングスタイル」という3つ目の要素が加わって初めて「ゲーム」として成立するのである。
 まあ、良く考えると「システム」「シナリオ」「マスタリング(スタイル)」の3つでTRPGというゲームが出来るというのは、そもそものTRPGの発生から鑑みて当然と言えば当然の結論と言えよう。

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1-2.TRPGの定義
 以上から、僕にとって長年の懸案であった「TRPGとはいったい何ものであるか?」という謎がすっかり解けてしまったことになる(笑。ということで以下にその定義を示す。

★1「TRPGの定義」
 TRPGとは「システム」「シナリオ」「マスタリングスタイル」の3つの要素によって完成される「ゲーム」である。


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1-3.TRPGの公平性
 TRPGを構成する3要素のうち、「システム」「シナリオ」は基本的に変化しないが、「マスタリングスタイル」はGMの思惑次第で容易に変化してしまう。逆に言うと、「マスタリングスタイル」をGMは意識して統一することで、セッション中に公平な裁定を下すことが出来るようになる。

★2「TRPGの公平性の保証定理」
 GMは「マスタリングスタイル」を一貫したものに維持することで、そのセッションの公平性を保つことが出来る。


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2.パラダイムシフト
<パラダイム>
〔paradigm,「範例(=動詞・名詞などの語形変化の典型的な例)について示した表」の意のギリシャ語に由来〕〔おもに科学史で〕その時代・社会において、一つの分野に属する学者のほぼ全員が共通の大前提として認めている、研究の基本的手法や問題意識(の手本)。〔

Shin Meikai Kokugo Dictionary, 5th edition (C) Sanseido Co., Ltd. 1972,1974,1981,1989,1997

 「パラダイムシフト」と言うのは具体例を言うと、西欧で「天動説」が覆されて「地動説」が認められたとか、「進化論」によって人間は最初から神によって作られたのではなくて、サル(類人猿)から進化して人になったのである、というような、世間一般の人が「これは当然だろう」と思っていたことが根底が覆る現象のことである。

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2-1.TRPGにおける「パラダイム」と「パラダイムシフト」
 TRPGというのはセッション参加者の共通認識によって想像上の「世界」を作り上げるものであり、その世界の法則が“セッションを運営するルール”によって定められる。上記の論で書いたが、TRPGにおける“ルール”というものは「システム」「シナリオ」「マスタリングスタイル」の3つが揃うことで完成する。

 ところが、「マスタリングスタイル」というものはPLの創造的な提案や、セッション環境によってプレイ中に変更されてしまうことがある。そして、「マスタリングスタイル」が変わってしまうとそのセッションを運営する“ルール”が根底から覆ってしまうことになるのだ。これを「TRPGにおけるパラダイムシフト」と呼ぶことにする。

★3「TRPGのパラダイムシフトの定理」
 TRPGのセッションでは「システム」「シナリオ」が変更されることは少ないが、PLの創造的な提案や、セッション環境によって「マスタリングスタイル」が変更されてしまうことはしばしばある。「マスタリングスタイル」が変更されるとセッションを運営する“ルール”が根本的に覆されることになる。


★4「TRPGにおけるパラダイムシフトの定義」
 「★3」に記述した現象を「TRPGにおけるパラダイムシフト」と定義する。


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2-2.パラダイムシフトの具体例
 パラダイムシフトの具体例を以下に示す。

例1)
 基本は「ハウダニット」のスタイルで敵をいかに倒すかを考えていたのだが、どうも「敵」の事情を知ると相手にも同情の余地があるような気がしてきた。なので「敵」に寝返って「敵」を諭すことでその悪事をやめさせるよう説得してみることにする。ダメだった場合は問題を解決するよりもその「敵」を助けることを重視したいので、他のPCの敵となって戦うしかないな(ホヮイダニットへの転換)。

例2)
 基本は「ハウダニット」のスタイルで敵をいかに倒すかを考えていて、セッションもようやく中盤が終わってあとはクライマックスの戦闘をしてエンディングを語れば終わりだ!という状況までこぎつけた。しかしセッションに残された時間はあと15分しかなくなってしまった。とても戦闘なんてやってる時間はない。ということで、クライマックスの戦闘には首尾よく勝ったことにして予定調和的なエンディングで締めておこうか(メタ・ハウダニットへの転換)。

例3)
 戦闘場面はルールガチガチの戦闘をしよう(ハウダニット)。PCの会話場面は、まあ馴れ合いで良いので予定調和的にお約束な軽い話にしよう(メタ・ハウダニット)。

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2-3.パラダイムシフト後の対処
 TRPGにおけるパラダイムシフトが発生するとセッションを運営する“ルール”が根本的に変わってしまう。“ルール”が変わってしまったのに「公平さ」を保つことが出来るのであろうか?という問題が発生する。これに対しては以下の方法で対処できる。

対応1)GMは常に「現在の『マスタリングスタイル』は何を採用しているか?」を意識すること。そして、その「マスタリングスタイル」に合わせた裁定を首尾一貫して下すように気をつける。

対応2)「TRPGにおけるパラダイムシフト」が発生する/しそうな場合には注意すること。その転換をGMが制御できる場合には、転換させるべきか/させないべきかよく考えてから対処すること。基本的にパラダイムシフトを許容するとその分セッションの処理が重くなって長くなりがちであるので、時間に余裕があるかを考慮すること

対応3)PLがPCをどういうポリシーでプレイするかについてはGMは制御できないため、その“ポリシー”によるパラダイムシフトはGMが制御することが出来ない。パラダイムシフトにGMが対応できそうにない場合はPLに頼んでそのアクションなり何なりを取りやめてもらう必要が発生する。

対応4)パラダイムシフトした場合は、その後の「マスタリングスタイル」に合わせた裁定を首尾一貫して下すようにする必要がある

…ということで、TRPGに関する定義/定理もここからいくつか発生する。

★5「パラダイムシフトの不完全制御定理」
 「TRPGにおけるパラダイムシフト」は、PLのプレイングのポリシーに依存してGMが制御しきれない場合がある。


★6「パラダイムシフトに対応した公平性の保証定理」
 GMは常に「現在の『マスタリングスタイル』は何を採用しているか?」を意識し、その「マスタリングスタイル」に合わせた裁定を首尾一貫して下すことでパラダイムシフト後も公平性を維持することが出来る


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以上。
理論はできたのであとは実践ですかね。

んではまた。
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by namizusi | 2005-01-15 15:04 | TRPG